宮田: するとエレベーターに乗り合わせた住民の方のほとんどが、私が乗り降りする間、いつもドアを開けて待っていてくれました。そうするのがごく自然な感じで、私が「ありがとう」と言うと、「どういたしまして」と笑顔を返してくれる。おかげで、中国人はみんなマナーが悪いというイメージが覆りました。こういうことは、実際に中国に住まなければ気付かなかったと思います。

その気付きが研修プログラムにも生きた。

宮田:そう思います。私が「中国人にもおもてなしの心はある」と確信したのも、誰かに言われたわけではなく、上海での生活の中で自分自身が自然にそう感じたからです。だから「日本との違いはきっと表現の仕方なんだな」と想像することができました。

とはいえ、上海のサービス業は全体的に人手不足で、転職も盛んです。社員教育が追いつかない面もあるのでは。

共感を持つ社員が部下に伝える

宮田:確かに、社員の入れ替わりの多さは予想以上です。1号店の開店前は新入社員の教育研修にもある程度時間をかけて取り組めましたし、私たちがなるべく丁寧に教えることで、職場に愛着を持ち、お客様によりよく接することができる社員を育てたいと考えていました。

 それだけに、初期のメンバーには私たちの思いが比較的伝わったと期待していたのですが、現実にはやはり辞めてしまう人も少なくなかったですね。それでも、多数とは言えませんが現在も残ってくれているメンバーがおり、みんな管理職になっています。会社の考え方に共感を持つ彼らが、それを新入社員たちに引き継ぎ、お店を引っぱってくれているのは心強いです。

上海の「極楽湯」1号店の浴室
上海の「極楽湯」1号店の浴室

今後の多店舗展開を考えると、社員教育はますます重要ですね。

宮田:この先ずっと考え続けなければならない課題です。今夏には内陸部の武漢に3号店がオープンしますが、上海と比較すると、日本文化に対する関心や理解度が深まるのはまだまだこれからだと感じます。そういうなかで、武漢のお客様に満足していただくにはどうすればいいのか。そのためにどんな社員教育が必要なのか。中国は広いですから、新しい土地に行けばまた新しい試行錯誤があるはずです。

 上海で極楽湯が成功したことで、私たちの店舗のデザインを模倣した競合施設も現れ始めています。それらと差別化するポイントは、やはり接客の丁寧さ、館内の清潔さ、お湯の衛生管理などです。お店の見た目はコピーできても、運営のノウハウは簡単には真似できません。教育・研修を通じて社員の意識を高め、よりよいサービスを提供し続けたいと思います。