中国に限らず、日本企業が女性社員を海外駐在員として派遣するケースはまだ少ないですよね。なぜ宮田さんが選ばれたんですか。

宮田:それは私にはわかりません(笑)。当時の私はそれほど経験値があったわけでもなく、「よく声をかけてくれたな」と上司に感謝しています。

 ただ、上海の1号店は中国資本の温浴施設とはっきり差別化するため、「若い女性のお客様が1人でも安心して利用できる施設を作る」と最初から決めていました。そのためには、男性社員だけでなく女性社員の派遣も必要だという判断があったのだろうと思います。上司からは「女性の目線のアイデアや、女性客を呼び込むための提案に期待している」と激励されました。

浴衣は6種類(VIP会員は8種類)から選べる。女性客を意識して可愛い柄を揃 えた
浴衣は6種類(VIP会員は8種類)から選べる。女性客を意識して可愛い柄を揃 えた

女性の目線で見て、女性客の心をつかむポイントは何でしょう。

宮田:やはり店内を全体的に明るく、清潔感があるようにする。それが何より大事だと思います。私も現地資本の温浴施設の調査に行きましたが、やはり女性には入りづらい雰囲気だし、休憩スペースも薄暗くて女性が一人で休むには不安だなあと。

 そこで、極楽湯では休憩スペースを隅々まで明るくして、女性のお客様に安心して使っていただけるようにしています。実は、ひと眠りしたい男性のお客様には明るすぎるかもしれないんですが、あえてそうしています。

 他にもかわいい絵柄の館内着をそろえて、カップルで楽しんでもらおうとか。キッズコーナーを広くして、お子様連れのお母さんが利用しやすくしようとか。女性のお客様は細かいところまで気がつくので、私たちも細かい部分に気を配るよう心がけています。

女性客を意識し、休憩エリアは明るい
女性客を意識し、休憩エリアは明るい

尖閣問題での反日デモは?

なるほど。ところで、上海にはいつ赴任されたんですか。

宮田:1号店がオープンする半年前。2012年の7月頃でした。

ということは、2カ月後に日本政府の尖閣諸島国有化に抗議する激しい反日デモが起きていましたよね。怖くありませんでしたか。

宮田:不安がまったくなかったと言えばウソになりますが、少なくとも上海で暮らしている限り、反日感情を意識することはほとんどありませんでした。むしろ自分のまわりの中国人の方が、私が不安にならないよう気遣ってくれたように思います。

 もちろん、日々の生活や仕事のなかで考え方の違いに驚いたり、困ったりしたことは少なくありません。でも個人的には、現地の人々に温かく接してもらった思い出の方が強く残っています。その意味では、日本で報道されている中国のイメージとはまったく違いました。

例えばどんなことですか。

宮田:仕事の話ではありませんが、私は上海で暮らしていた時、自宅の賃貸マンションから事務所まで自転車で通勤していました。マンションには自転車置き場がなかったので、私は自転車を毎日エレベーターで部屋まで運んでいたんです。

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