中野:秋から冬にかけては人手を一気に増やさなければならず、一度に20~30人が入社することも珍しくありません。そのために毎日面接です。それでも、頭数の確保を優先して採用の基準を下げれば、質の低い人材が入ってサービスの水準を保てなくなる。それに、採用しすぎると春には人手が余ってしまいます。

どんな基準で採用するんですか。

中野:一般従業員に関しては、まず笑顔があるかどうか。服装や姿勢がちゃんとしているか。髪の毛に寝癖がついていないかもチェックします(笑)。また、採用後に最初の研修を受けている時の態度を見て、ふざけてばかりだったり、まったく指示に従わない人にはその場で帰ってもらうこともあります。

一般従業員と管理職では、意思疎通のしやすさに違いはありますか。

中野:学歴の高い管理職でも、やはり「個人と個人」の関係が大切だと思います。日本人はいったん指示を出せば、ある程度放っておいても「やるべきことをやらねば」と考えて行動するのが普通です。

 その点、中国人はやはり人を見て行動するところがあって、放っておくとだんだんパフォーマンスが下がってしまうことがあります。怠けているわけではないのですが、マニュアル通りにやっていれば十分という考えになりがちで、目の前に改善すべき問題があっても見過ごしてしまう。やはり個人の立場で雑談したり食事に行ったり、常にコミュニケーションを保つことが、彼らの気付きのためにも大切だと思っています。

「公務員の主人の面子にかかわります」

中国人は面子にこだわり、管理職が現場に出たがらないという話もよく聞きます。

中野:一般的には、接客や清掃などの仕事が格下に見られていて、管理職がそれをやるのは恥ずかしいという意識があるようです。うちでも管理職候補で入った社員のひとりが、「知人に見られたら恥ずかしいので、接客以外の職場に配属して欲しい」と希望したケースがありました。そこで、なぜ恥ずかしいのか聞いてみると、自分自身が恥ずかしいというより、公務員のご主人の面子を潰したくないと。中国にはそういう考えもあるんだと驚きました。

 でも、「お客様をもてなす」ことが極楽湯のサービスの原点です。現場が忙しくて手が足りない時は、管理職も自主的に現場に出て接客するのが当たり前。だから現場の仕事をきちんと理解しないとダメなんだと、僕はいつも口酸っぱく言っています。管理職向けの現場研修も繰り返しやっています。

受付の仕事は管理職にはハードルが高い?

中野さんも現場に出ますか。

中野:もちろんです。日本人だけ例外なんてあり得ません。ただ、中国語ができないと高度な接客は難しいので、僕は1号店のオープン当初はよく飲食の洗い場を手伝っていました。皿洗いは中国のサービス業の中でも地位が低いと見られがちで、仕事がきつくて辞めてしまう人も少なくない職場です。

 そこで、僕が洗い場に入って一緒に働き、従業員たちに笑顔で接することで、職場の雰囲気を少しでも明るくしたいと考えてやっていました。また僕の方も、「やはり人が足りないな」とか「ここは改善の余地があるな」とか、管理面の様々な課題が現場に入って初めて見えてくることが多いんですよ。

日本人が手本を示すことで、中国人管理職の意識は変化しますか。

中野:そう思います。1号店の立ち上げ時期に採用した社員のなかからは、極楽湯の考え方を理解して自ら行動できる管理職が育ってきました。