中野:日本と中国の間のギャップには、僕たち日本人もイライラするけれど、彼ら中国人もイライラしている。例えば、彼らが「このくらいで十分だ」と考えることに対して、僕らが「これじゃ日本では通用しない」とはっきりダメ出ししますからね。彼らも悩むし、つらいだろうと思います。そういう心情は理解してあげないといけません。

ところで、初の中国進出で会社の知名度がないと採用自体も大変なのでは。

中野:確かに大変です。いろいろある僕の仕事のなかで、採用は一番重要と言っても過言ではないと思います。今でこそ中国の人材を見るコツや方法論がわかってきましたが、最初のうちは本当に悩みました。そもそも採用以前に、どうやって人を集めればいいのか。集めても、どう選べばいいのか。相手のどこを見て判断すればいいのか。まったくわかりませんでした。

 日本からの第一陣で赴任したのは、私のほかに店舗設計の担当者と、日本で採用した元留学生の中国人通訳の3人でした。でも仕事を始めると、通訳がひとりではまったく足りません。

 そこでまず、日本語ができる人材の募集から始めました。中国では毎週末、各地で「採用会」というイベントが開かれます。日本の「就職フェア」みたいなもので、日本語人材に絞った採用会もあります。そこへ出かけて行ってブースを出し、会社の紹介や面接をするんです。ところが、求職者たちはブースの前を素通りしてなかなか立ち寄ってくれない。

指示に従わない人は、その場で不採用も

どうするんですか。

中野:それはもう、会場でチラシを配ったり、ブースにのぼりを立てたり、動画を流してみたり、いろいろ試しました。

 何しろ1号店のオープン前は、誰も極楽湯なんて知りません。また、我々は最初から女性をターゲットにした店作りを計画していたので、女性社員の募集に力を入れました。しかし中国の女性には、お風呂屋さんに対して「いかがわしい場所」という偏見があります。また、本人が入社に同意しても、親御さんに反対されて辞退されるケースが何度もありました。お嬢さんを日本に留学させられるような裕福なご家庭ほど、より偏見が強かったからです。

 1号店が開業して女性の人気を集めるようになってからは、そういった苦労はほぼなくなりました。しかし、お店の現場で働いてもらう一般従業員やアルバイトの採用は今でもかなり大変です。

大都市の外食や小売りなどのサービス業は慢性的に人手不足で、転職もさかんと聞きます。

中野:それに加えて温浴施設に特有の事情もあります。冬場と夏場の繁閑の差が大きいので、お店を回すために必要なマンパワーも変化するんです。1号店の場合、冬場は260人は要りますが、夏場は160人で足りる。その差は主にアルバイトで調整していますが、採用活動のさじ加減が難しい。