松本:ちなみに当社の国内事業は直近の決算(2016年3月期)でも増収増益でした。これは2014年にオープンした「RAKU SPA鶴見」のようにリゾート志向やエンターテインメント性を高めた新店舗を出したり、その他の既存店でもお客様の満足度を高める努力を地道にやってきた成果だと思います。

 とはいえ、中長期的に見れば国内市場の成長は期待しにくいので、中国という成長力のある市場に足がかりを築けたのは当社の強みですね。

話が戻りますが、御社の施設は中国の既存の温浴施設とは、具体的にどんなところが違うんですか。

松本:まずは何と言ってもお風呂の水質管理と衛生管理です。例えば、浴場のお湯は日本の設備を入れて徹底的に浄化すると同時に「軟水化」もしています。中国の水道水は濁りが入ることが珍しくないうえ、硬度が高いので、そのまま頭を洗うと髪の毛がゴワゴワになってしまうんですよ。

1号店の浴室。日本のそれと区別がつかない。

 上海の水道水を調べた段階で、「これは徹底した浄化と軟水化をしないとダメだ」と判断しました。日本の風呂屋だからそれが当たり前だと思って取り組んだんですが、1号店をオープンした後、あるお客様から「こんなに透き通ったお湯は初めて見た」と褒められました(笑)。お風呂から上がった後も髪の毛がゴワゴワせず、肌もすべすべでしっとりしている。上海女性はそんな違いにとても敏感で、私たちの予想以上の評価をしてくれました。その評判がクチコミやSNS(交流サイト)で広がり、オープン半年後くらいから一気に火がついた感じです。

水質の違いを文字通り「肌で感じて」もらえたと。

松本:水質だけでなく、施設全体の清潔さも自慢です。館内のあらゆる場所を、スタッフが必ず15分に1度はチェックして掃除をしています。

 それから秘訣と言えるかどうかわかりませんが、お客様を「裸足」にしたことも大きい。入館時に靴をロッカーに預けてもらい、館内は裸足で歩いていただくようにしたことで、衛生管理がずっとやりやすくなりました。

サンダル履きにしなかった理由

どういうことですか。

松本:中国の温浴施設でも入館時に靴は脱ぎますが、館内はサンダル履きというところが多いんです。すると、中国人の感覚ではお店の床は地べたと同じで、ゴミを捨てたり痰を吐いたりする人が出てくる。

 注意せねばならないのは、これは良し悪しではなく習慣の問題だ、ということです。同じ中国人でも、自分が裸足で歩く場所にゴミを捨てたり痰を吐いたりすることはほとんどありません。

なるほど。

松本:もちろん、マナーを守らない人がゼロにはなりませんが、そういうお客さんがいたら、最近は常連客が注意してくれます。

事前調査で中国の温浴施設がサンダル履きなのを見たら、普通は「うちもサンダル履きにしよう」と考えそうですが、なぜ裸足にこだわったんですか。

松本:最初から裸足ありきではなく、日本のお店では裸足が当たり前だから、どうすれば日本と同じにできるかという発想で考えました。

 それで、まず「中国ではなぜサンダル履きが当たり前なんだろう?」と。「確かに床が汚いよね」。「どうして汚いんだろう?」。「ゴミを捨てたり痰を吐く人が多いからね」。「汚させない方法はないのかな?」。「日本のように裸足にすれば汚さないんじゃないか」。「じゃあサンダルそのものを置かなければいい」という具合に、社員たちが知恵を出し合って決めました。

 1号店は本当にゼロからのスタートでしたから、この話に限らず中国と日本で習慣が違う場合は、まずどこが違うのか。なぜ違うのか。どうすれば日本と同じにできるか。そういうことをひとつひとつ考えて積み上げながら、独自のスタイルを作り上げていったんです。

日本式が受け入れられた点はほかにもありますか。