極楽湯の中国1号店

昨年来、中国経済の減速が盛んに報じられていますが、極楽湯ではそれを感じますか。

極楽湯の松本俊二専務

松本:当社に限って言えば、少なくとも現時点ではそれほど強い影響は感じていません。もちろん中国経済全体で見れば、統計数字に表れているとおり成長の勢いが鈍化しています。とはいえ、あらゆる産業の景気が悪いかと言えばそんなことはない。製造業の状況はかなり深刻だと聞いていますが、サービス業は相対的に元気だと思います。

 それに、同じサービス業のなかでも濃淡があるんです。例えば、富裕層向けのブランド店や接待向けの超高級レストランは中国政府の“倹約令”などの影響が大きい。でも、都市部の中間層向けのショッピング・モールや映画館、そして私たちのビジネスである温浴施設などは、毎週末たくさんのお客様で賑わっています。

経済全体では減速していても、御社は好調だと。

松本:おかげさまで(笑)。当社は海外進出の1号店を2013年2月に上海でオープンさせ、15年2月には同じく上海に2号店を出しました。1号店はもう4年目に入りましたが、来店客数も売上高もずっと前年超えが続いています。今夏には内陸部の武漢で3号店を開業する予定です。

 ちなみに温浴施設は、短期的な景気変動より気温の変化に大きく左右される商売なんですよ。ざっくり言えば秋冬がハイシーズンで、春夏がローシーズン。昨年の上海は夏から初秋にかけての気温が平年よりも高く、10月になってもお店が空いていたので、実はちょっと心配しました。

 ところが11月に入ってぐっと冷え込んだら、お客様が一気に押し寄せてきました。12月下旬に最低気温が一時マイナスになった時は、1号店の来店客数が1日に4000人を超えて過去最高を更新したほどです。あんな寒いなか、大勢のお客様に並んでお待ちいただいて、申し訳ないやらありがたいやら。

雨の中、1号店に出来た行列

入店までどのくらい待つんですか。

松本:ピーク時で3時間前後でしょうか。ロビーの椅子を増やして、なるべく店内でお待ちいただくようにしていますが、入りきれない時はお店の外に防風カーテンを設置して並んでいただきました。入店待ちのお客様には、「あと何時間かかりそう」とか「いつの時間帯なら比較的空いている」などのご案内もしています。それでも、ハイシーズンの週末はいつも昼前から夕方にかけて2~3時間待ちという状況です。

利用料金は日本のざっと3倍?!

日本式のスーパー銭湯が、なぜそんなに人気なのでしょう。

松本:いくつか理由があると思いますが、大きな背景としては、やはり中国社会の変化があります。経済成長とともに人々の生活が豊かになり、上海のように中国のなかでも所得水準が高い大都市では、ある程度おカネと時間に余裕のある中間層の厚みが増しています。と同時に、彼らがおカネと時間の“使い方”に目を向ける段階に入ってきたのだと思います。

 日本でも、戦後の高度成長期を経て人々に経済的余裕が生まれ、さらに週休2日制の普及で時間的余裕ができたのをきっかけに、余暇やレジャーに目が向くようになりましたよね。そこにおカネや時間を費やすことの価値に、みんなが目覚めたわけです。同じことが中国でも起きつつある。

利用料は日本と比較して安いのですか。

松本:いやいや。入館料は138元で、円換算すると約2300円。日本のスーパー銭湯の入館料は650~700円くらいですから、ざっと3倍強です。それだけのお金を払って来てくださるお客様が、上海では増え続けています。

素朴な疑問ですが、中国人は入浴時に湯船につかる習慣がありませんよね。住宅の浴室も多くはシャワーだけです。そんな国の人々が、日本よりも高い料金を払って通うのは不思議です。