環境経営でゼロエミッションに取り組む際にも単に埋め立て廃棄物をゼロにするだけではなくて、コストダウン効果があることを当初から意識していたようですね。

松﨑:だから今、中国のサプライヤーさんが付いてきてくれるんですよ。「ウチにも来てくれ」と。
 中国で年に1度、メディアと交流会をやっています。その時に環境経営を熱心にやっていることを説明すると、「そんなことをしたら利益がでなくなる」と言われました。
 中国のメディアや企業は、政府から環境が重要だと言われていましたが、なかなか踏み込めないでいた訳ですよ。
 「いやいやそうじゃない。ちゃんとやってくれればコストダウンになります。逆に言うとコストダウンをやってくれれれば、環境にも良いんですよ」と言って、具体的に示すと中国のサプライヤーも実感として感じ、続けてくれということになります。

今の環境経営はどのような段階にありますか。

松﨑:始めは環境負荷の低い製品を作ることや、工場の環境負荷低減をやりました。
 最近はサプライヤーさんにも取り組みを広げています。販売の営業活動に環境のメンバーも同行し、お客様の環境負荷低減をお手伝いすることを提案しています。そういうことをやっていれば、数ある取引先の中で当社を選んでくれるということにつながることがあります。

持続成長を目指すことに総論で反対する人はいないと思います。ただ社会の変化が早く、外部からの短期的な要請が強い中で、貫くのが難しい面があります。持続成長を続けていくうえで、どんなことがポイントになると考えていますか。

松﨑:当社の場合には、創業事業を続けられなくなった経験をしています。今まで通りの事業を続けていられない業界にいます。
 そうすると、外の動きと変化に敏感でなければならない。手遅れにならないように早め早めに手を打っていかなければならない。

 環境が変わるということを前提に経営をしていくことです。注意しないと変化を感じられない業界であれば、事業の変革は難しいかもしれません。

 こんなグラフを並べて説明することがあります。左に世界のカラーフィルムの総需要の年次推移、右側に世界のデジタルカメラの総需要の年次推移があります。
 左側には1995年に赤い矢印を入れて、左側には2007年に赤い矢印を入れて説明します。1995年はカシオ計算機さんがデジカメを商品化し、そこから5年でカラーフィルムがピークを迎え、5年で市場が半減し、その最中に当社は撤退しました。

 当社を撤退に追い込んだデジタルカメラの市場が右です。2007年は米アップルがスマートフォン「iPhone」を発売した年です。その3年後の2010年にピークを迎え、その3年後に半減しています。ですから今、デジカメメーカーさんは四苦八苦しています。

 このようにテクノロジーの進化が事業に及ぼす影響は強烈です。今の時代、数年前まではタクシー業界がITの影響を受けるなんて誰も考えなかったでしょう。どの業界もこれからはテクノロジーの影響を受けると。受けるとすればどんな影響を受けるのかを考えて、会社を変えていく必要があります。

変わってほしくないという意識があると、変わることを受け入れ難いのでしょうね。

松﨑:変わることはエネルギーがいりますからね。今は事業の転換を掲げていますが、主力事業が今まで通り売れる訳ではないですから。
 カラーフィルム事業から撤退した時には、それまで複合機や機能材料事業を育てていたので、撤退できた訳です。ですから、それを続けないといけません。

変化が激しいと危機意識を持ちやすいのですが、徐々に市場が変わっていくと気づきにくいですよね。

松﨑:経営経験がある人は、必ずこういう観点で質問しますね。この1年でも取締役会で事業が計画通りにいかなったことを説明すると、「この変化は一時的なのか構造的なのか」と。