何を持ってマツダらしさかが生煮えだった

zoom-zoomという言葉を初めて聞いた時、正直あまりピンときませんでした。金井さんはどう受け止めたのですか。

金井:私にとってzoom-zoomは大歓迎で、ありがたかった。その前後に初代アテンザの主査を務めたので、新しいアテンザをzoom-zoom戦略にのっかってやる最初のクルマになることが明確になりました。

  (当時のzoom-zoomの定義が書かれた紙を指し示す)これが定義ですからね。ブランドDNAを構成する3つの人格として、「センスの良い」「創意に富む」「はつらつとした」。商品として「際立つデザイン」「抜群の機能性」「反応の優れたハンドリングと性能」を定めました。最後の言葉は、後に「走行性能」としましたが。

 ここまで(細かく)定義してくれた。ものすごくうれしいですよ。私はシャシー、足回りのエンジニアだったし。

会社全体の戦略にしては、かなり具体的ですね。

金井:すごい具体的でしょ。

これまでのこうした定義はあったのですか。

金井:こうしたものはなかったです。個性という言葉はしきりに言われました。

個性ですか。漠然としていますね。

金井:「例えばトヨタさんみたいな大手と同じことをしちゃいかん。もっと個性を、マツダらしさをだせ」と言われてました。
 当時は何を持ってマツダらしさかということが生煮えで、「距離をとれ」と理解していたんですが。

ロードスターは「日本カー・オブ・ザ・イヤー」と「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。「走る歓び」を前面に出すブランド戦略が奏功している

ヨーロピアンに行ったり、アメリカンになったり

個々の社員が別のイメージを持っていたかもしれませんね。

金井:社員もそうですし、プロジェクトごとに違う。このクルマはど真ん中からどっちに外そうか、特徴をどこで出そうかという議論を、プロジェクトごとにしていました。
 ですから、ある時にヨーロピアンな感じなプレーンですっきりして、スタイリッシュなクルマに仕上がりますが、アメリカで弱い。その反省もあって、モデルチェンジの時に思いっ切りアメリカンに振れちゃうとか。
 私は「これでいいのか」とずっと疑問に思っていたので、フォードがここまで言ってくれたのが本当にありがたかった。

 2000年には「アテンザの志」という言葉を開発チームに示していました。「アテンザの参入クラスにおける新たな世界のベンチマークになる」と。ぞうずうしくも、高飛車に出ているでしょ。

意欲的ですね(笑)。

金井:なまじの覚悟じゃないぞ。こういう志で作ろうということになって、アテンザがそこそこ成功して。
 そうこうしたら私が2005年に開発の日本人としてのトップになった。
 zoom-zoomをしっかりやって世界一のクルマを作って、品質をちゃんとやって。それならお客様も我々も誇りを持てると。

社内の反応はどうでしたか。

金井:開発の中はみんなノリが良かったですよ。この当時はzoom-zoomのビデオはあったものの、ホントにあれでマツダは成功できるかという懐疑的な見方はたくさんありました。