プリウスの開発に似ている

こうした演繹的な目標の作り方は欧米企業の得意分野に映ります。「環境チャレンジ2050」のような取り組みは、トヨタにとって珍しいアプローチですか。

根本:確かに積み上げ式で決めるプロセスが多い会社だと思います。
 ただし、大きなチャレンジの時は、こういうケースもあります。今回はプリウスの開発に似ているのではないでしょうか。

 私は開発出身ではありませんが、入口のところでコストや今の技術の議論になってしまうと、プリウスは開発できなかったかもしれません。

プリウスの開発エピソードについては内山田会長がよく話していますね。

根本:環境対応の製品で先頭を走ってきた思いはあります。ただ今回は、事業の隅から隅までで挑戦するという話です。
 今回はトップの思いを受けながら、横同士でも連携を取りながら話を進めました。

既に世界一の販売台数を誇る自動車会社になっています。次に何を目指すかという時に、中長期的にチャレンジできる目標があった方が社員はまとまりやすいように感じます。

根本:はい、発表以降、社内がスッキリしたような気がします。
 それまでは何を目標にするかが見えておらず、「環境部は余計なことをしてくれたな」と思っている人もいたかもしれません。

 ただ目標が決まったことで、ここから先は一枚岩で進んでいけるところがトヨタのカルチャーです。

具体的にどのようなプロセスで長期目標を作り上げていったのでしょうか。

根本:環境部のメンバーが東奔西走して、議論を進めました。世の中で今何が起きていて何が議論されているかの情報を社内に入れていきました。

 日々たいへんなオペレーションで忙殺されている現場は、なかなか外部のウォッチができないと思います。コーポレート部門が世の中の動きをきちんと補足して、解釈してシンプルな情報として流す必要があります。

みなさんが一同に会して議論する場もあったのですね。

根本:トヨタには環境関連の委員会が3つあります。基本はこの3つの委員会で大きな方針を決めます。

この委員会の前段階で特に侃侃諤々議論していたのですね。

根本:そうですね。ただ合意していないものも委員会に上げることもしました。

ゼロ目標は相当、議論があった

特にどんな議論が白熱しましたか。

根本:最終的は「ゼロとまで言うのか」ということですよね。

2050年に世界の工場でCO2排出量をゼロにするという目標は、かなりの再生可能エネルギーを使わないと難しいですよね。

根本:そうですね。再エネも調達で賄えるのか、自前の設備で用意するのかという判断があります。
 これはいろんな検証があって、それならできそうだということで決めた目標ではありません。

 今でも積み上げて目標達成が見えたという段階になっていませんから。
 「必達という保証がない中で、本当に外に言うの」という話です。トヨタは言った以上、やります。その意味では、たいへん真面目な会社です。

 

長期目標があると、短期目標も立てやすくなりますか。

根本:最終的な目標があるかないかで、マイルストーンの立て方は変わってくると思います。
 トヨタは時々、大きなチャレンジをして、それを乗り越えて、会社が強くなってきたと思います。

 ですから長期目標はかなりのチャレンジになりますが、トヨタがひと皮むけるんだと思います。

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