環境対策は準コンプライアンス

コストありきだと、環境目標が作りづらいのは良く分かります。

根本:そうですね。社内では「環境の取り組みは準コンプライアンスと捉えるべき」と話しています。

 コンプライアンスはお金がないからやらないということが許されません。環境の取り組みはコンプライアンスとそうでない部分がありますので、準コンプライアンスが捉えるのがいいのではないでしょうか。
  世のため、人のためということから入ると、かなり前向きな対応ができます。その上でコストをどうするかを検討する。コストを先に立てるのではなく、すべきことから議論を始めることが大事です。
 もちろん社内では激しい議論になりました。最初の頃は「(環境部は)一体、何を言い出すんだ」と言われました。いきなりゼロと言い出しましたから、これは当然だと思います。

厳しい目標を発表すると場合によっては事業の足かせになることもあり得ます。

根本:真面目な会社ですから、コミットメントに近い形になるだろうという話になりました。

 環境部が対話したのは、各機能の統括部署ですが、それぞれ微妙に立ち位置が違います。
 環境部はコーポレートですから、会社の中長期の環境変化を読み解いて、必要であればリフォームすることを考えます。裏を返すと、足元の責任から若干解放されています。
 ところが各機能部署は中長期の責任もあるものの、足元の責任を負っています。
 両者の立場の違いを乗り越えるためには、様々な議論が必要です。経営の上層部に行けばいくほど、コストから理念寄りのお話になっていきます。
 誤解ないように言いますと、環境部にとってもコストは無視できません。
 ただ足元のコストの実力で判断してしまうと、環境の話は進まなくなってしまうのです。

2100年にはCO2を出せない環境になる

収益責任を持っている機能部署と一緒に中長期目標を作っていくのは難しい部分ですね。そこをどのように説得していったのでしょうか。

根本:かなり長い議論をしましたが、最終的には世の中でなされている議論をどう理解するかだと思います。

 決め手になった資料があります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートです。これは科学的な知見です。CO2排出量と温暖化の進み方の相関を示したグラフです。
 (2050年に世界で温暖化ガス排出量を2010年比41~72%削減すれば、気温上昇を2度未満となる確率が高いという)2度シナリオを世界が受け入れました。
 ですので、2030年は相当な削減幅になり、2100年にはCO2を出せない事業環境になるんだと覚悟していました。これは経営の大前提が変わるぐらいの大きな話です。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートによれば、気温上昇を2度未満にするためには今世紀後半以降にCO2排出をゼロ以下にしなければならない
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートによれば、気温上昇を2度未満にするためには今世紀後半以降にCO2排出をゼロ以下にしなければならない

この情報を見て、みなさんはどのように反応したのですか。

根本:これだけではなく、IPCCのこのレポートに類する資料や他社の先進事例も提示しました。
 最終的には個別企業の話を超えて、こうならざるを得ないという結論になっていきました。

IPCCの2度シナリオに応えていかないと、商売が続けられなくなるということですね。

根本:そうですね。消費者の意識調査などデータは相当集めました。温暖化への関心やエコ製品への志向性なども高まっています。
 他社の事例は見ましたが、IPCCのデータが突き抜けれています。2050年は短期ではないが、そんなに先ではありません。

新車走行時のCO2排出量を90%削減というのは、IPCCのデータから導き出した目標ですか。

根本:はい。IPCCの数字と各国の規制がリンクしていることは検証しています。燃費規制の推移を表にプロットしていくと、やはりIPCCが描く傾きで厳しくなっています。
 技術陣は規制の動きもあり、たいへんだという感覚はあったと思います。

技術陣は理解しやすい部分はあったのですね。

根本:クルマの技術陣にとってCO2削減は避けて通れない部分でした。今、問われているのは製品だけでなく、サプライチェーン全般の取り組みです。

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