5年後だけの議論は、長い目で見るとかなり危険

5年単位の目標というのは、具体的な商品サイクルの範囲内にとどまりますね。

根本:クルマは5年後の商品をある程度決めていますから、できることは限られてきます。
 5年後だけを議論していると、世の中のたいへん厳しい議論との温度差がかなり出てきます。長い目で見るとかなり危険ではないかという認識になりました。

 トヨタは環境だけでいうと、中長期の目標を出したことがなかった。最終的にどこを目指すのかという社内の共通認識を作り、それを踏まえて2020年までの6次プランを作成するという議論の順番になりました。

 ここまでくると発表するのは、6次プランでなく、長期目標をメインに公表した方がいいのではないかと、社内が切り替わっていきました。

 COP21に向けて議論が白熱する中で、世の中もNPOやESG投資(環境や社会、企業統治を投資判断に入れる)の観点から企業への監視が厳しくなっていきました。
 いろんなランキングがあり、情報開示も強く要請されます。それも過去の事実だけでなく、先々の考え方まで求められています。
 そういう中で、我々も社外と社内のためにも何か言うべきではないか、という議論になりました。

「できること」から「やるべきこと」へ

社内のため、という意味も大きかったのですね。

根本:最終的に目指すところを一致させた上ではないと議論は進みません。足元だと常にコストの議論になってしまいます。環境はコストから入るとなかなか進みづらい領域です。

 長期目標の策定において、コストの議論をどのように乗り越えるかが1つの大きな問題でした。どう乗り越えるかは、最後は会社の理念そのものだと感じました。

トヨタの次世代車開発の目標。競合他社はこのグラフのクルマごとの比率を物差しで測った
トヨタの次世代車開発の目標。競合他社はこのグラフのクルマごとの比率を物差しで測った

 外部の方にどう見られているか分かりませんが、トヨタはCSR(企業の社会的責任)という言葉が普及する前から「世のため、人のため」という思いが非常に強い会社だと思っています。

 特に印象的だったのが、内山田竹志会長が「できることをやるんじゃなくて、やるべきことをやろう」と常に言っていたことです。その言葉に(現場の)我々は救われました。 

 世界で温暖化に巡っての議論がなされている時に、我々がやるべきことはなんだろうと議論が飛躍できたのです。
 その瞬間にコストを基準にできるできない、という議論から跳躍できました。

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