KISSが最初にメディア向けのお披露目ライブを行った話が『ミー・インク』のなかにありました。無名の自分たちをメディアに印象づけるため、地元の人気バントを何組か呼んで人を集め、自分たちの人気があるように見せるなど、緻密な計算があり、会場に招待されたメディアは、まんまとそれに乗ってしまった。無名の企業、無名の商品を世間に認知させるためのコツを教えてください。

ジーン:人と違うことをすることさ。同じ手法でやっていても特に無名のバンドは認知されない。だが大切なのはその手法よりも、中身だと思っている。あの時のお披露目ライブでは、ステージに立ったどのバンドよりも私たちのほうがいいライブをしたと自負している。

より一層働いて、次は還元していく

莫大な財産を築いた今でも、ジーンの事業意欲は衰えないように見えます。一つの成功に満足せず、常に「もっと上」を求めるバイタリティーの源は何か? がんばり続けることができる原動力は何か?

ジーン:原動力は、やはり強制収容所のサバイバーである母の教えだ。生かされているかぎりは、常に上を目指す責任がある。チャンスはいくらでも自分で作り出せる。特に、このアメリカという国はそういうチャンスに恵まれていると思う。だから、仕事に限らず、人道支援、チャリティーやボランティアも含め、自分の時間を人のために使うのは大切だ。

ご自身をサメにたとえて、人生はビジネスそのもの。サメは常に泳ぎ回り、泳ぎを止めたときに溺れて死ぬ、とおっしゃっていますが、それの意味するところを教えてください。

ジーン:先ほどの質問と同じさ。常に上を目指してトライし続ける義務があると思っている。特に成功したり財産を築いたりした人はね。私も、世間一般で言うお金持ちになれたわけだが、だからこそより一層働いて、次は還元していくべきだと思っている。人を助けるのも救うのも、自分が成功して力を備えていないとできないことだから。

イスラエル・ハイファでの幼少時代、友人と山でサボテンを摘み、ジュースにして売ってお金を儲けた話が著書『ミー・インク』に載っていました。それが起業家の第一歩だったのですね?

ジーン:その通りだ。自ら考え発想し、心を込めて労働し、それに対して評価と対価が伴うことは人をこんなにも誇りと幸せで満たしてくれる、ということを幼少の時期に学んだ。資本主義の原点だね。

ジーン・シモンズとして、いま一番力を入れている事業、これからやってみたい事業、投資家として有望と考えている技術やビジネスアイデアがあったら教えてください。

ジーン:今、映画会社を三つ立ち上げた。その一つがプロレス団体WWE(World Wrestling Entertainment)と組んで低予算のホラー映画の製作に特化した会社だ。私も出演しているんだ。映画といっても、ロックバンドと一緒で、これからは映画をどうエンタテインメントとしてより広いビジネスにつなげていくかが課題だ。ゲームやライブショー、ブロードウェーと組むなど色々やっていきたい。それとは別に、絵画の投資会社も作った。投資と節税を兼ねたプランを銀行と考えた新しいビジネスだ。

新しい事業アイデアはどのように発掘するのですか?

ジーン:多くの一流の人間と会うことさ。特に起業家として成功している人は、常に次のビジネスを考えているので、いい刺激と情報交換になる。ベスト・オブ・ザ・ベストの人たちと会っていると、なぜ彼らがそのポジションにいるのかがよく分かる。私は限られた時間の中で、「ふつうの人」と会うヒマはないと感じている。同じ志、同じ仕事への倫理観をともにする人でないと、申し訳ないけど話していてつまらない。

(次回に続く)

ロック界のレジェンドが、手ほどきする本格ビジネス書
KISSジーン・シモンズのミー・インク~ビジネスでドデカく稼ぐための13の教え
『<b>KISSジーン・シモンズのミー・インク~ビジネスでドデカく稼ぐための13の教え</b>』<br />(ジーン・シモンズ著、大熊希美/滑川海彦訳、日経BP社、1800円+税)
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 KISSのジーン・シモンズは、バンドの象徴であるフェイスペイントやロゴをいち早く商標登録し、ビジネス化していった先駆者だ。現在では、コミック、棺、アクションフィギュア、テレビゲームなど5000アイテム以上のライセンス商品が世界中で販売されている。さらに、プロのスポーツチーム、レストラン・チェーン、金融ベンチャー、レコードレーベルなどのビジネスにも乗り出している。イスラエルの極貧の家に生まれ、幼少期、英語をまったく話せない状態で渡米。徒手空拳から成り上がったジーン・シモンズは、生き方、音楽、ビジネス、すべてに関して貪欲だった。だが、単にアグレッシブなだけではなく、将来を見通す冷静さと事業マインドも持ち合わせていた。本書でジーン・シモンズは、野心ある起業家に成功のために必要なツール、そして自分というブランド資産を軸としたビジネスを構築する方法について余すところなく手ほどきする。
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