著書『ミー・インク』のなかで、「統計によると」というフレーズがたくさん出てきます。事前の市場調査をかなり綿密に行っていることがうかがえますが、進出する事業を決める際、どのように事前調査を行うのですか?

ジーン:まずは、会社としての売り上げ、社会的評価、資産などのマクロのリサーチは当たり前として、同時にミクロのインサイドの情報も非常に大切だと思っている。これはビジネスだけでなく、人と付き合うことでも一緒だ。シャノン(編集部注:ジーンの妻)のことを知りたいと思ったら、評判や昔の彼氏を調べるのは当然としても、彼女の心の在りよう、考え方、立ち居振る舞いもすべて観察するだろ? 社内の情報・状況を正確に把握することは必須だ。

そもそも楽器にベースを選んだのも、事前調査の結果から?

ジーン:私がバンド活動を始めたのは14歳のとき、最初に手に取った楽器はギターだった。でも、バンドをやりたい奴らはどいつもこいつもリード・ボーカルかギターを担当したがる。だから、バンドにそもそも入れてもらうには誰も見向きもしなかったベースが早道と分かって、直ちにベースにシフトしたよ。そしたら、すぐにバンドに入れた(笑)。

さまざまな企業とコラボしているが、組むか組まないかを決めるポイントはどこにあるのか?

ジーン:もちろんビジネスとしての勝算もあるけど、大切なのは組む相手だ。どういう人がパートナーになるか、成功するも失敗するも、パートナー選びが最も重要だと思っている。自分と同じ価値観、そして仕事への倫理観を持っていなくては一緒に組むことはない。

我々の商売は「幸せ」を売ること、商業的で何が悪い?

企業では顧客の要望を聞き、商品を開発するのは当たり前です。KISSも、ファンの要望に応えるため、希望があればグッズなども開発・販売し、ファン(顧客)との距離を縮めてきました。それが、一部の音楽評論家からは商業主義だと批判されていますが、そこがKISSらしさでもあります。顧客満足向上という視点で意識していることは?

ジーン:私はファンと近い。私自身がKISSのファンであり、その心理を分かっているというのもある。だから、世界中のファンの声を常に聞いているし、多くのファンから直接情報も入ってくる。常にファンと近いところにいると、彼らが何を求めて、何を評価しているかがわかるので、その要望に応えることが商品開発の一番の近道だ。我々の商売は、「幸せ」を売ることだと思っている。だから、音楽評論家などが「KISSは商業的なことばかりする」と批判しても、全く気にならない。ファンに「幸せ」を届けることの何が悪い? 

 例えば、私のベース。私がステージで1曲でも弾いたベースをファンが買えるようにしてあげたら、ファンは喜んでくれるんだ。欲しい人がいれば、それを手に取れるようにしてあげるのはいいことだと思っている。私が子供のころ、ポール・マッカートニーのベースをいくら欲しくても、絶対に手に入れることはできなかったからね。また、衣装やメイクをカスタマイズできるなら、楽器もカスタマイズしてワン・アンド・オンリーなものを作れると気づき、今のAXEベースを思いついた。ジャズ・ミュージシャンからヒントを得てね。彼らは、自分たちの楽器のことを「AXE」と呼ぶんだ(編集部注:AXE=斧。ジーンのベースは文字通り斧の形をしている)。だから、斧型のベースを作ってくれる会社を探して、韓国にいい会社を見つけた。そこに自分で発注している。もちろん、AXEベースは商標登録をしたよ(笑)。

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