長門:米国の大統領は、たとえばアイゼンハワーなど、人間味や気安さを売り物にして選挙戦を勝った人もいるし、トルーマンも最初はまったく期待されていませんでしたが、ちゃんと戦後体制を作りました。他のチョイスのほうがもしかしたら、よりいい結果になったかもしれませんが、米国の民主主義、政治人材のインフラは凄い。大統領1人がどう騒いでも動かない部分もいっぱいありますし。

 人材といえば、政治的任用でホワイトハウスに入るのは、どういう人達なんでしょうか。

長門:もちろん野心もあるけれど、「米国のために」と思っている人が多いですよ。その中に、すこしウォールストリート寄りとか、反対寄りとか差はあるけれど。

 たとえば、次期大統領の経済政策は誰が見るんでしょうね。

長門:財務長官ですね。それは世銀総会の参加者の中でも話題になっていました。従来なら、ウォールストリートの大立者たちの出番で、ポールソン、ルービンなどもそうだったのですが、今回はそういう人達は絶対に出てこないだろうと。

 そういう人たちは、トランプ現象や、バッテリーパークの「誰もが銀行員嫌い」デモを見て、潮目が変わるまでは出て行かない。また、政府も選べない。「おそらく、かつて財務省や中央銀行にいた、清い心を持っている人から選ぶことになるだろう」というのが会場参加者の雰囲気でした。

国内回帰は誰がなっても止められない

長門:世銀総会でも、米国金融機関のトップたちは自らの課題として、レギュレーションがいっそう厳しい方向に振れていくことを挙げていました。リーマンショック以後8年くらい経ちましたが、「金融業界はほうっておくと何をするか分からない。しっかり監督せねば」という意識はいまだに強くなり、どんどん厳しいルールが科されそうです。現地の金融マンは「厳しく監督されるのがイヤだ、というレベルで異議を唱えたいのじゃない。プレーヤーとして、マーケット全体の流動性が落ちてしまい、本来の業務が果たせなくなることを恐れているんだ」と口々に言ってますね。

 例えば、自己勘定での投資がボルカールールなどで禁止されましたが、金融機関にとっては収益機会が減る、市場にとっては供給されるお金が激減してしまう。そういうことですから。

 草の根の怒りはまだ解けていない。

長門:ええ。金融業界、ひいてはグローバリズムで潤った層への激しい憎悪を、今回のトランプの“大健闘”は見せつけたわけです。「世界よりも国内だ」という圧倒的なプレッシャーが、トランプがなるにしてもならないにしても、次の大統領にはかかります。残念ながら、それは間違いないでしょう。