いかにもですね。

長門:読んでみたら彼に興味がわきまして。80年代後半には、日本興業銀行(当時)のニューヨーク支店も彼の不動産部門にお金を貸し付けていた。その縁もあったので、当時の副支店長と一緒に、トランプタワーのオフィスに行きました。プラザホテルを見下ろすオフィスに、美人の秘書を従えて、大きな背丈で出迎えてくれましたよ。私が「不動産はいま加熱している。バブル化しているんじゃないかとの声もある。あなたはまだまだ拡大しているけど懸念はないのか」と聞いたら「俺も心配している。だけど、世の中には王冠に付く宝石のような、ジュエル級のアセットがあって、そういうものは心配ない。俺はジュエルだけを狙うんだ。たとえばプラザホテルみたいにね」とか言っていました。

トランプ』ワシントン・ポスト取材班、マイケル・クラニッシュ、 マーク・フィッシャーほか著、 文藝春秋

 非常にディプロマティックで、とても感じが良かったですよ。だから、アプレンティスで「You're Fired!」と叫ぶトランプを見たときはびっくりしました。要するに目立ちたがり屋で、そのために振る舞いを変えることができる人なんでしょう。

 ワシントン・ポストがまとめた辛辣な評伝『トランプ』を読んでみたんですけれど、まさしく、人の話題になることが何より好きな方のようで。この目立ちたがりが大統領になったら米国は、世界はバラエティ番組、いや、リアリティショーになるんじゃないかと思わされます。

“トランプの家”でも、米国の政治スタッフは支えきるだろう

長門:それについては、僕はちょっと違う見方をしているんです。米国の政治体制はそんなに柔じゃないんじゃないかなと。

 確かにトランプは危ないことをいっぱい言っていて、その通りに米国が動いたら大変です。だけど、いざ大統領になって、政策を作ろうという時には、これまで共和党政権を支えた経験者がポリティカルアポインティ(政治的任用)で入って、チームで動き出すはずです。なんだかんだ言って共和党には優秀な政治の実務人材がたくさんいる。トランプが思いつきで言っていることでも、ずっとまともな形に肉付けされて出てくるでしょう。だとすれば、そんなにひどいことにはならない可能性も高い。

 なるほど。では世界経済への影響はどうですか。

長門:これも心配するほどは揺れないでしょう。あまり言うと楽観的すぎると叱られそうですが、やはり、組むであろう閣僚、スタッフの間を通っている間に、トランプの施策は止揚されてマイルドになると思います。

 別の理由としては、米国の力はむろん絶対的には強力ですが、かつてよりは相対的に弱まっている。世界が米国の意向ひとつで動くほど、シンプルではなくなってきたということもあります。仮にトランプが大統領になったからと言って、ただちにものすごい事態が訪れることはない、と考えています。