トランプがここまで来た理由は、グローバリズムへの反発だということですね。

長門:もちろん、それだけじゃないと思いますよ。もうひとつ、どちらかというと最初の理由は、大統領選が始まった段階で、「次はヒラリー」だと、誰の目にも見えてしまったことにあるんじゃないでしょうか。共和党を見てもジェブ・ブッシュくらい。しかも早々に勢いを失ってしまった。

 こうなると「せっかく大統領選挙をやるのに、ショーとして面白くない」と、米国民の多くが思います。

 ほとんど勝負が決まった試合を見ても仕方ない、誰か出てこないか、みたいな…。

私が見たトランプの印象

長門:その点、トランプはテレビ番組「アプレンティス(The Apprentice=見習い。トランプがホスト役を勤めたリアリティショー)」で大人気を博した、しゃべりの面白い芸達者な人。「無責任だけど、彼が候補者になったら何を言うのか、テレビで見てみたい」という層が、本当に現状に不満を持っている人以外に、相当あったのではないでしょうか。

 日本から来た友人とのディナーを早めに切り上げたいくらいに…。

長門:1回目の討論会も視聴したんですけれど、普通に見て、ヒラリーの方が成熟しているし、知識、経験があるのは誰でも分かったと思いますよ。それでもなおかつ、2回目も見たい、中傷合戦でかまわない、という、テレビショーとしての楽しさへの期待がある。

 しかし、こうしてみると、ヒラリーがこんなに不人気なら、共和党はもしかしたら、普通にやっても勝てたのかもしれませんよね。

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』ドナルド・J. トランプ、トニー シュウォーツ著、ちくま文庫

 そういえば、トランプとお会いになったことがあるとか。

長門:トランプがプラザホテル買ったころに自伝本を出したでしょう(『トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』)。当時米国にいて、あれを読んだんです。その中で彼の哲学が「絶対に鞄を持たない」と。たぶん、鞄に資料などを入れて持ち歩かなくても、その場の当意即妙で勝負できる、ということじゃないでしょうか。頭がいい人のやり方です。ああいえばこういう。弱点は、数字を入れた細かい議論で詰めていくと、詰まるか逃げる。