長門:米国の銀行って、意外にストックで勝負しないんです。フィーで稼ぐのが基本ですから。社員も、自分のやったディールをネタに次の会社に移ろうとする、瞬間瞬間の狩人の世界です。よく言われる比較ですが、日本はじっくり耕して、毎年米を収穫しようとする。いまの米国では無理です。働く方も、めちゃくちゃハードワークをしますが、「自分はここまでだな」と諦めたらすぐやめて、見切りが早いんですよ。

 ご自身は?

長門:僕は、仕事が好きだから(笑)。ゴルフやお酒がもっともっと好きだったら、こうはならなかったでしょうね。

外資に憧れ、でもちょっと違うなと

 ちょっと立ち入ったことを伺います。今日のお話でも、長門さんは国際派だし、米国流と相性がよさそうです。前職(シティバンク日本法人会長)から、ゆうちょ銀行社長を経て日本郵政ホールディングス社長、というキャリアは、ご自身ではどう思っておられるのでしょうか。

長門:ちょっとオーバーで、生意気な物言いなんですけど、ゆうちょ銀行に移るときには、「そろそろ最後だな」と思ったんです、フルタイムの仕事としては。そうなると、「日本のために」という仕事ができたらいいなと思ってはいました。銀行マンをやっている時に、ずっとうらやましかった職業が2つあって、官僚の人と新聞記者の人なんですよ。

 へえ。それはまたなぜ。

長門:なぜかというと、官僚の人はやっぱり「For Japan」なんですよ。日本のためにということで働いているわけ。それからジャーナリストの人も、「For Japan」と「For Now」なんですよね。現代の課題のために働いている。そういう意味で僕は、うらやましいなと思った。

 興銀もそういう側面が強い金融機関だったのでは。

長門:ええ。興銀はわりとニュートラルで、あまり金、金、金という銀行じゃなかったんですけれども、どんどん時代とともに、また合併もあって、そういうふうになってきました。それからシティバンクに勤めて、外資はやっぱり違うなと思った。

 外資系って、長門さんのイメージ的にはぴったりに見えましたけど。

長門:うん。実は憧れてはいたんですよ。「外資、1回やりたいな」と思っていたわけ。行ってみたら、ちょっとやっぱり違うんだね。海外経験が多いとか、まあまあ英語ができるということで、僕のリソースは使いやすい職場ではあるんだけれども、やはり外資は、さすがに「日本を愛している」とまでは言えないなと思ったのと、当然ながら最終意思決定は、ニューヨークの本社で為されているんですよね。

 よく言う「雇われマダム」だなと思われたわけですか。

長門:「ラインに入って、決定権を持てるところにいたいし、それが、日本に貢献できるんだったらすてきだよね」と思っていたところに、お話をいただいたわけです。そして来てみたら、案外、これまでの経験が生きる職場だったと(こちら)。

日本人の特性を活かした金融ビジネスもあり得る

 なるほど。そして今、投資銀行の人達とふたたび別の立場で交渉することになったわけですね。話が戻りますが、国際金融の世界では、日本の金融機関は勝ち目はないんでしょうか。

長門:基本的には、当面米国にはヨーロッパも敵わない。暫くは彼らの天下が続くでしょう。でも、日本には日本のやり方、テリトリー、ビジネスオポチュニティーはある。特にアジアでは、いわゆる「グローバルスタンダード」よりも、日本の企業や金融機関の思考法のほうが相性がいい国がけっこうあると思います。

 たとえば、アジア通貨危機後、流出した資金を補うためのIMF(国際通貨基金)の支援策・資金提供プラン導入を、マレーシアのマハティールが拒否したことがありました。「あんたの言うこと(=米国流のスタンダードな施策)は将来においては正しい方策かもしれない、だけど、そもそも文化が違うし、歴史的に現状はまだグローバルスタンダードを咀嚼できる状況にはないことは分かってくださいよ」と。それに応える形で考えられたのが、「新宮沢イニシアティブ(「アジア通貨危機支援に関する新構想(新宮沢構想)」ですよね。

 アジアならば、日本人の特性で勝負できるかもしれない。もしかしたら、アジアに対しては日本の金融機関の出番がこれまで以上に来ているのかもしれません。お金は持っている。でも国内需要はない。となれば、経済成長のエンジンにガソリンを供給し、安定させる機能を果たすのは、金融マンにとっても悪くない仕事じゃないでしょうか。