長門:…と言われているけれど、実際にはちゃんとスピーチをして、その中の名文句だけが残った、というのが真相らしいですね。言葉もちょっと違って「Never give in.Never,never,never,never」が正しい(参考リンクはこちら)。意味はほとんど同じだし、分かりやすいほうが広がったんでしょうね。
「チャーチルの、一文だけのスピーチ」は、都市伝説なんですね。それで?
長門:「だけど、チャーチルが言う『ネバーギブアップ』は、簡単なことじゃないんだよ」と話しました。例えば、「Never,never,never give up」を日本語にするとどうなるか。
はて。
長門:たとえば「朝の来ない夜はない」とか、「出口のないトンネルはない」とか、そんな言葉では彼の言葉を訳すには軽すぎるんです。
長門さんならば、どう訳すのですか?
長門:「夜死んでしまえば、朝は来ない」でしょうね。
ははあ…。
“成功するまで、絶対死ぬな”
長門:暗い夜だろうと、トンネルの中だろうと、どんなに先が見えなくても、生きて、歩み続けて、朝が来るまで、出口が見えるまで生き延びなきゃいけないんです。「これがチャーチルが言った『ネバーギブアップ』だと思います。それぐらいの気合を持って生きましょう」と、使わせていただきました。
長門さん、こういう「ダイハード」なお話を持つリーダーの本がお好きですよね。
長門 そうですか、そういえばソールズベリーの描く『ニュー・エンペラー』の鄧小平なんてまさに「Never,never,never give up」ですよね。前回もちょっと触れましたけど、中国の指導層に居ながら65歳になって失脚して、長男が大けがをさせられた上に幽閉されて、自分はヒラの工員としてトラクター工場で働く身になって。それでも諦めずに、息子のために嘆願書をあちこちに書き、体力維持のため毎日の運動を欠かさず、工場では腕のいい工員として評判を取る。
長門:そして、文化大革命の大失敗で打つ手がなくなった毛沢東からついに声がかかる。その時の彼の返事が「準備はできています。仕事をください」。
格好良すぎますよね。チャーチルにも挫折の話が山ほどあるとか。
長門:そもそも、彼は青年期までは勉強ができなくて、大学にも行けず、3回落第して士官学校にようやく入ったんですよね。政治家としても、自分のミスで何度も失脚しているし、戦争指導にしても、第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも大失敗をしている。でも、彼が居なかったら、米国が連合国側に立って戦ったかどうかは疑問とされている。
なるほど。

長門:と、このくらいしか本当は知らないんです(笑)。チャーチルの本も、『第二次大戦回顧録』をちらっと読んだかな。
実は私もそうなんですが、最近出た『チャーチル・ファクター』という本をご存じでしょうか。
長門:いえ。おすすめなんですか?
担当編集の方が知り合いで、友人からも紹介されて読んだのですが、これがものすごく面白いんです。例えば、彼の名演説が作られていく仕組みが詳細に紹介されています。
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