長門:いや、夜の9時半とか10時に帰宅したら、風呂に入ってすっきりしてから、読み残した朝刊を読みだすんです。そして切り抜きをしたりして。

切り抜きもなさるんですか。

長門:日経のスポーツ欄とかね(笑)。「権藤さん(「悠々球論」権藤博)、いい事言うなあ」なんて言いながら。新聞が終わったら「フィナンシャルタイムズ」をぱらぱらとめくって、「ロンドンエコノミスト」も読んで…とやっていますと、あっという間に11時半ぐらいになる。さすがにそこから本を読もうという気分にはならないです。新しい本をさっぱり読めないのです。約束は守りたいのですが、どうしましょうか。

以前、日経ビジネスの「ビジネスパーソンへの推奨本(連載は終了)」で取材をさせていただいた時は、リチャード・ニクソンの自伝『ニクソン 我が生涯の戦い(原題:IN THE ARENA)』や、ソールズベリーによる鄧小平の評伝『ニュー・エンペラー(原題:The New Emperors)』を取り上げて下さって、大変面白かったです。

『ニュー・エンペラー 毛沢東と鄧小平の中国』(上・下) ハリソン・E・ソールズベリー著、天児慧訳、福武文庫(絶版)

長門:ああ、どちらも、尋常ではない挫折から復帰したリーダーの本でしたね。「forty plus forty plus forty plus forty times forty」(『ニュー・エンペラー』35章タイトル)の。

65歳で失脚した鄧小平を描いた章ですね。「南昌に与えられた鄧小平の小さな家には、庭がついていた。彼の足で一辺がちょうど40歩。一周するのに、40歩が4回。それを40周。毎日彼は早足で歩き続けた。体力、気力の維持のためだ」。こういう本をこういう形で、ビジネスパーソン向けに取り上げて下さる方は珍しい。ですので、新しい本に限らず、長門さんが読んできた本の中から、記憶に残っている、ビジネスパーソンにお薦めの本をざっくばらんに教えていただければ。

長門:それでいいですか。じゃあ、大昔に読んだ本ですが、この辺でやってみましょうか。

金融マンとしては意外な留学先

『アメリカにおける秋山真之』(島田謹二著、朝日選書)。2009年に朝日文庫で復刊されたが、こちらも絶版。

『アメリカにおける秋山真之』。最初に出たのは、1969年、朝日新聞社からですね。秋山真之は、日露戦争の日本海軍の作戦立案、特に日本海海戦での勝利に貢献した日本海軍の参謀。彼を描いた本といえば、普通なら司馬遼太郎の『坂の上の雲』、と思うところなんですが。

長門:「坂の上の雲」が産経新聞に連載されたのは1968年から72年ですから、その前に書かれた本です。読み物としての面白さは「坂の上の雲」のほうが数段上ですし、この本を取り上げるのは、誰にでも役に立つ本、というより、僕の個人的な経験のためなのですが、かまいませんか。

大丈夫です。

長門:僕は1972年に興銀に入って、73年に留学生試験を受けて、74年の9月からFletcher School of Law and Diplomacyという国際関係論の学校に行ったんです。

当時の興銀は、フレッチャーに留学に行けたのですか。すごい。あそこは外交官養成校かと思ってました。