「ネットは恐竜を滅ぼした隕石だ」

土井:出井さんも焦っていたんだろう。外部のコンサルをたくさん使って、彼らの言う通りにソニーを変えようとした。あらゆるソニーの既存ビジネスをネットワーク対応型にしようと試みた。そこで、いくつかのカンパニーに、「ネットワーク」という名称を付けて檄を飛ばし続けていた。「ネットは恐竜を滅ぼした隕石だ」とか「このままだとソニーはつぶれる」とか言っていた時代の頃だよ。

 世の中的には、その頃はまだ出井さんに脚光が当たっていたから、キャッチーなことを言って注目を浴びていたものの、一向に成果が出ないから格好が悪い。そして出井さんもだんだん焦ってきた。

 急激にソニーの組織を変えようとしてはみたけれど、取り巻きの三流エンジニア以外の優秀な現場のエンジニアはついてこない。一生懸命やればやるほど、現場のプレッシャーは増して、うつ病の社員も増えていく。会社を支える現場の人材がそうなっちゃっているから有望なビジネスは一つも立ち上がらない。そしてまた、現場の幹部やエンジニアが経営トップから罵倒されるというサイクルが続いた。

 こうして、ソニーのフロー経営は破壊されていったんだ。

 そこから2年後、ソニーショックへ突入していった。外から見たら調子良く見えたソニーがおかしくなっていて、ついにその症状が外部に出た。それが2003年4月のソニーショックだよ。理想と現実のかい離が、具体的な業績悪化という数字となって健在化した。

 ソニーショックの後、「ソニー神話が崩壊した」とマスコミに騒がれた。だけどソニーの崩壊はその時すぐに起こったわけじゃないんだ。何年もかけて、徐々に徐々に、ゆっくりと崩壊が進行していたんだよ。

 これがソニーショック前夜の話。ソニー内部の現場にいた人間の、偽らざる実感だよ。

(4回目に続く)