2003年4月7日…分かりません。

土井:手塚治虫のSF漫画の主人公「鉄腕アトム」の誕生日だよ。

 だからこそ僕は、QRIOのプレス発表を、ロボットの象徴的な日であるこの日に設定したかった。研究開発の段階から「QRIOはアトムの誕生日に発表するんだ」と目指していたくらいだからね。

 SF漫画の世界ではなく、現実の世界でこの日、二足歩行のロボットが世に出るなんてワクワクするでしょ。この日にQRIOをプレス発表することだけは譲りたくなかった。

 けれど会社としては、経営トップである出井さんの肝入りで進むクオリアも同じくらいの時期にプレス発表したいと考え始めていた。

 ここで私と出井さんの意見がぶつかってね。仕方ないから、私は少し譲歩した。本当はやりたくなかったけれど、苦肉の策として、「QRIOをクオリアブランドのラインアップに入れてもいいから、4月7日に発表させてくれないか」と提案したんだ。

 だけどダメだった。出井さんは自分で立ち上げたプロジェクトを優先したいし、そこに自分が反対しているQRIOを入れるなんて断じて許さなかったよ。そして、結局はクオリアの発表が優先されてしまった(2003年6月10日にソニーはクオリアをプレス発表した)。

 それだけでなくQRIOは、私の知らない間に裏で手を回されて、プレス発表どころか、2004年に発売中止が社内決定されたんだ。商品化が見送られたんだよ。

出井さんと「怒りのメール合戦」

 これにはもう、頭にきてね。そこで僕は、出井さんと怒りのメール合戦をしたんだな。QRIOの開発に関わっていたエンジニアが100人以上いたんだけど、このメールはこれらエンジニア全員にCCした。

 いわば、QRIO関係者に全て公開する僕と出井さんとのメール合戦。僕も相当頭に来ていたし、出井さんも譲らないから、もう互いに言いたい放題。さすがにどんな内容だったかはここでは言えないけどね(笑)。

 挙句の果てに私は、出井さんから「お前はクビだ」と、この公開メール合戦の中で宣告されたんだ。会社の経営トップとそんなメールのやり取りを激しくやっていたから、クビになることは最初から覚悟していたから、特に動じることはなかったよ。