本誌1月23日号の特集「トランプに負けるな!」では、グローバリゼーションの修正が始まる時代に企業が成長し続けるカギは、「サステナブル経営」にあると位置づけた。連載第4回は、米ボストン コンサルティング グループ(BCG)のCEO(最高経営責任者)、リッチ・レッサー氏に話を聞く。

【記事のポイント】

  • ●すべてのステークホルダーに向き合う経営に
  • ●「長期」「短期」で経営の二枚舌は許されない
  • ●「世界共通ルール」は崩壊、公正の判断難しく
(写真:陶山 勉、以下同)
(写真:陶山 勉、以下同)

リッチ・レッサー(Rich Lesser)氏

米P&Gを経て、1988年にボストン コンサルティング グループに入社。ニューヨーク・オフィス代表、南北アメリカ地域代表などを経て、2013年1月から現職。米ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得

トランプ大統領の誕生や英国の欧州連合(EU)離脱など、2017年はかつてないほど先行きを見通すのが難しい年になりそうです。そうした環境で、企業にはどのような経営が求められるでしょうか。

リッチ・レッサーCEO(以下、レッサー):長期的に持続可能なビジネスをするには、いくつか決定的に重要な観点があると思います。

 まず第1に、顧客志向に徹し、もっともっと価値ある製品やサービスを提供し続けることです。これは、企業組織にとって最も重要な活力源の1つです。

 第2に、人材を引きつけることです。優秀な人材を採用するのが重要なのはもちろんですが、採用した人材が成長し、組織に貢献し続けられる環境を作り出すことが大切です。

 第3に、現在の世界情勢においてこれまで以上に重要になっているのが、変化への対応力です。世界の変化に応じて学習し、進化し、変化する能力が求められます。

 そして、もう1つ重要な事があります。これが特に私が強調したい点ですが、多様なステークホルダーに向き合う能力が、かつてないほど重要になるでしょう。

 20年ほど前なら、経営者はほとんど顧客や生産性、コスト効率、研究開発(R&D)などだけにフォーカスしていればよかったわけですが、今の世の中、国ごとに異なる政府や規制当局の仕組みを理解し、共に事業を行うことが極めて重要になっています。そして、従業員の満足度を高めることが大切なほか、気候変動をはじめとする環境面での持続可能性(サステナビリティー)への配慮も欠かせません。

 こうした多様なステークホルダーの満足度を高めている企業は、株主価値の向上だけに注力していたり、もしくは自分たちのビジネスに関する狭い視野しか持っていなかったりする企業と比べて、競争上、優位に立つことができます。

長期と短期、経営の「二枚舌」は許されない

多様なステークホルダーを満足させるには、長期的な視野が欠かせませんね。

レッサー:難しいのは、一方で長期ビジョンに基づく経営をしながら、他方で短期的に危機感を持って行動し、イノベーションを起こしていかなければならないことです。長期的な視点だけに基づいて経営をしていたら、経営戦略は鋭さを失い、優位性を打ち出せなくなる可能性がある。しかし、短期的な視野だけに基づいて経営をしていたら、政府との関係構築や気候変動など、他の要素を見失いかねません。

 成功している企業というのは、この両方の視点を上手くバランスを取っています。

それをやるのは容易なことではありませんね。

レッサー:まさに、非常に難しい。短期的に非常に高いレベルで経営戦略を実行しつつ、長期的な視点で経営モデルを変革していかなければなりませんから。しかも今、企業は徹底した透明性を要求されており、すべてのステークホルダーに対して完全にオープンである必要があります。もはやステークホルダーごとに異なる説明をするような二枚舌は許されません。短期、長期を一貫した戦略で同時に実行していく必要があるのです。

 経営トップの最も重要な責任は、短期と長期の橋渡しをすることです。短期的な競争に勝つために、組織に競争心や危機意識を醸成すると同時に、幹部だけではなくすべての従業員のモチベーションを高めなければなりません。他方、企業の存在意義を常に見つめ直し、長期的に社会に価値を提供するための目的に向かって、行動し続ける必要もあります。それを成し遂げることが、これからの経営に求められるリーダーシップでしょう。

 インタビュー全文は、スマートフォンやタブレット端末などでも日経ビジネス本誌が読める「日経ビジネスDIGITAL」の有料会員限定となります。「日経ビジネスオンライン」の無料会員ポイントでもご覧いただけます。

【インタビュー後半のポイント】

  • ●「世界共通のルール」はもう通用しない
  • ●ローカルの政府・社会により配慮が必要
  • ●デジタル化の負の側面、相殺する努力を
まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。