トランプ氏の「成長志向」は評価できる

とはいえ、トランプ氏が大統領選に勝利したことは、世界中に大きな衝撃を与えました。

ポーター:水曜日(大統領選があった2016年11月8日の翌日)の朝、目が覚めてトランプ氏の勝利を知った時、私たちはショックを受けました。しかし、思い返せば、データを見ればそれほど驚くべきことはありません。トランプ氏勝利の背景にあるのは、1つは弱い経済でしょうし、もう1つは国を前進させる政治的な進歩に欠けていたことです。

 反移民など特定の馬鹿げた発言に過度に腹を立てずに、彼が言っていることに耳を傾ければ、1つ、ポジティブなメッセージがあります。それは、彼が全般的には成長志向だということです。

 (トランプ氏と大統領選を戦った)ヒラリー・クリントン氏は、成長志向とは言えませんでした。むしろ、再分配志向です。あるグループから取り上げたものを、他のグループに分配する。彼女は「企業こそが問題だ」と発言し、富裕層は公正な税金を収めていないと批判していました。実際には、米国は非常に累進的な税制を持っており、富裕層が税金のほとんどを納めているのですが。

 これに対し、トランプ氏のメッセージは少なくとも成長志向です。インフラを作り、税制を変えようとしている。日本でも、法人税を引き下げてきていますよね。今の時代、例えば、ある国の法人税が20%程度だとしたら、自国の税率を35%にしておくというわけにはいかないのです。つまり、トランプ氏のメッセージの一部は、米国経済が前進するために、本当に重要なニーズに言及しています。

 不幸にも、トランプ氏はメキシコ系を始めとする移民を争点として取り上げました。米国では移民が経済を底上げし、押し下げることはないという証拠は、揺るぎないものです。同様のことは、欧州連合(EU)離脱、いわゆるBrexit(ブレグジット)を決めた英国にも当てはまります。

 英経済では移民は極めてポジティブに作用しており、移民が何かを英国から奪っている証拠はありません。移民が流入し仕事を奪い、社会福祉サービスを利用するという懸念は、データに基づくものではなく、全ては恐れから来ています。

 私たちがブレグジットやトランプ大統領誕生から学ぶべきことは、現実に何が起きているのかを理解している一般市民が、いかに少ないかということです。政治において、誰かをスケープゴートとして非難するということが簡単に起きてしまうことは、恐ろしいことです。移民だけではなく、グローバル貿易、エリート、そして大企業がやり玉に挙げられる。決して、政治家は「(市民である)あなた」を非難しませんから。

 私は、こうした極端な状況が長く続くとは思っていません。特に、貿易やグローバリゼーションについては、少し楽観的に見ています。

次ページ よりフェアな貿易に向けて関係の精査は望ましい