「人にも地球にもポジティブ」な影響を与える

サステナブルな経営の重要性は理解できます。一方で、日本では具体的にどう実践すればいいのか、分からないという企業も少なくありません。

ハワード:イケアも1990年代から、サステナビリティーをどのように経営戦略に位置づけるか、試行錯誤してきました。

 経験的に、まず取るべきステップは、社内にサステナビリティーを推進する責任者を置くことです。それも、経営に携わる役員クラスが望ましい。その理由は、サステナビリティーを経営戦略と一体で考えなければ、社会に大きなインパクトを与えることができないからです。

 イケア自身もそうでした。90年代から環境対策やサプライチェーンの見直しなど、サステナビリティーに積極的に取り組んできました。一方で、当時はどの活動も単発的で、部分的な活動にとどまっていました。

 イケアはCSO(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)のポストを設けた後、その体制をがらりと変えました。経営の中で、サステナビリティーに取り組むことを宣言し、戦略と一体化しました。「People&Planet Positive」という戦略を掲げ、イケアのあらゆるビジネスが「人と環境にポジティブな影響を与える」という方針に沿ったものとすることを明確にしたのです。

 この方針の下に、イケアの個々の事業について、取るべき方策を具体化していきました。

 現在では、イケアの事業展開の基準は、すべてこの戦略に沿っているかどうかで判断しています。例えば、イケアには環境ベンチャーに投資するファンドがありますが、投資判断は、人と地球にポジティブな影響を与えるかという基幹戦略に沿っているかどうかを重視します。商品も同様で、この戦略に沿って開発されます。

 責任者を設け、経営戦略と一体化することに加えて、もう一つ大切なことは、サステナビリティーの活動を定量的に測定することです。サステナビリティーに取り組んだ結果、どれだけのインパクトを与えるのかを、可視化するのです。

 その方法は、いくつもあります。分かりやすいのは、二酸化炭素をどれだけ排出したかという点ですが、それ以外にも、再生可能エネルギーの利用率など、いくつもあります。測定方法を示すツールを提供するNPO(非営利組織)などもあります。

目標は100%でなければ実効性がない

数字で示すことは大切だということですね。

ハワード:はい。私はよく100%という言葉を好みます。100%リニューアブル、100%認定魚、100%リサイクルプラスチックなど、イケアには100%を掲げた活動がいくつもあります。

 理由は簡単で、目的がとてもクリアになります。例えば、60%にすると、それはどこかに言い訳できる余地を残してしまうのです。当初は、それほど意識はしていなかったのですが、社内での動き方も変わります。経営に良い緊張感も生まれます。決意の固さと同時に、徹底的に進めることにつながります。

確かに、100%という数字はインパクトがありますね。

ハワード:もちろん、すべて100%である必要はありませんが、数字を示すことはサステナブルを考える上ではとても大切です。世の中にポジティブなインパクトを与えているかどうかが、明確になりますから。

 さらに数字が、どのような意味を持つかを見せていくことも、経営にとっては大切だと思います。仮に何かの目標を50%達成したとき、それを、もう半分なのか、まだ半分なのか。捉え方次第で、組織のモチベーションは大きく変わります。フレームワークを前向きに設定することも、経営の大切な役目だと思います。

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【インタビュー後半のポイント】

  • ●「サステナブル経営」はイノベーションを加速する
  • ●サステナブルだから値段は高い、という発想は間違い
  • ●「目的志向」の人々が増えている