不透明感が高まる未来をどう見通すか。日経ビジネスの1月9日号の特集は「2017年紅白予測合戦」と題し、各界を代表する32人が「紅白歌合戦」方式で、2017年の日本から100年後の地球に至るまで大胆な予測をぶつけ合った。日経ビジネスオンラインでの連動記事では、そんな第一人者たちの中でも特に印象に残る「異色企業家」に、独自の視点から日本を取り巻く環境の変化や新たな産業の可能性などを読み解いてもらう。第1回は本特集でもトップバッターとして登場したジャパネットたかた創業者の高田明氏だ。

高田さんは通販業界の第一人者として、長年多くのヒット商品を発掘し、取り扱ってきました。2016年もヒット商品とされるものは多く登場しましたが、高田さんの目にはどのように映っているでしょうか。
高田:僕は今はもう現役を離れていますが、はたから見ていたりいろいろ相談を受けたりする中で感じることは、やっぱりスマートフォン(スマホ)関連のものが目立ちますよね。例えば2016年で言えば「ポケモンGO」など。でもそれは正直なところ、ちょっと残念だなと思っているんですよ。
近年のヒット商品と言われるものは、スマホ関連、SNS(交流サイト)関連のものばかりで、モノそのもの、つまりハードに注目が集まることが少ない。ハードばかりを扱ってきた僕のような人間からすると、そうした意味では予測しにくくなっている。
加えて、ヒット商品と表現されても半年くらいでパッと消えちゃうのが今の時代。ネットではないですが訪日外国人の爆買いも、百貨店で高級時計が売れていたのが、モノからコト消費にすぐに変わってきた。そうした意味では、消費のトレンドが読みにくくなっていると思いますね。
高田さんがジャパネットの社長を務めておられた2011~12年頃は薄型テレビの販売不振に苦しみ、その後商品構成や売り方を大きく変えることで業績をV字回復させました。消費トレンドの変化をいち早くつかみ対応した結果かと思うのですが。
高田:確かに、2011年、2012年は合わせて600億円ぐらい売上高が落ちてしまって、2013年に「覚悟の年」と言って大きく方針を転換しました。ただそれはトレンドをつかむというより、ジャパネットの原点に帰ろうという意識の方が強かったですね。商品構成では当時テレビの割合が6割近かったのですが、白物家電や他の魅力的な商品もたくさん扱おうという形で見直したのです。テレビの低迷は続くけど、それに変わる商品を発掘しようということですよね。
そうした中で、布団掃除機のレイコップや、新型の炊飯器などが登場してきた。ヒット商品ということで言えば、まさにレイコップのように新しい市場を作れる商品がそうだと感じますね。掃除機はあるけど布団専用の製品はこれまで存在しなかった。または、ダイソンの羽のない扇風機のように、新たな視点で開発された製品もある。これまでになかった需要を生み出したり、消費者が持つことを楽しめたりする商品こそがヒット商品の条件だと思います。
先ほどのハードのヒット商品が出てきていないという指摘に戻ると、日本の家電メーカーなどはなかなかそうした製品を生み出せていないということでしょうか。
高田:そうですね。日本でもバルミューダのように非常にユニークな企業はありますが、総じてなかなか難しいと思います。日本のメーカーは技術的には最高水準ですが、発想の転換という意味では画期的な製品開発ができにくくなっているのではないでしょうか。昔の成功体験に引きずられていたり、ソフトとハードを連動させて新しい消費体験を生み出そうという発想が乏しかったり、そのあたりが米国の企業などに比べて弱いのかなという気がしています。
例えば掃除機ロボットのルンバもそうですね。ルンバが登場して、多くの日本メーカーも同様の製品を出しました。技術的には決して負けていないと思いますが、先陣を切ったリーダーはどこかと言えば、やはりルンバであり、消費者にとってもそうなんですよね。だから全部持って行かれてしまう。そうした意味では、新しい価値を生み出して、自らトレンドを作っていくような商品が出てこないとダメだと思います。
ある種、人間の物欲を刺激するというか、消費者の隠れていた欲求を刺激するようなものでないと、ヒット商品にはなりにくいということでしょうか。
高田:物欲というのは、例えばモノを冷やしたいときに冷蔵庫が欲しいとか、暑いとき寒いときにエアコンが欲しいとか、楽になりたいという消費者の気持ちが根底にありますよね。ただ、日本をはじめ先進国では、そうした製品はある程度出回ってしまった。だからこそ、これからのヒット商品というのは持つことを楽しんだり、生きがいを感じられたりする方向に変わってきていくと思います。
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