――間違ったら再起不能でこの作業となると、これは確かに手間も熟練も要りますね。
林:コストがかかるもうひとつの大きな理由は、物理、論理とも、復旧作業用のシステム自体や開発、そしてその扱いに慣れた人材の育成にお金がかかることです。システムは基盤の形で提供されることが多く、1枚で200万円とかします。この手のツールはロシアのものが優秀で、そこに技術者を研修のために送り込むことも多い。
――そういえば、「当社にはクリーンルームがあります!」と、謳っている業者さんがよくありますが。
林:ああ、クリーンルームですか。
――薄い反応ですね。
林:弊社にもありますが、あれは実はコスト的には見かけ倒しです。クラス100、つまり無塵クラスでも、上から空気を浴びせて埃が入らないようにする程度で、見た目はビニールのテントみたいなものですし、コストもたいしてかかりません。クリーンルームがあるかどうかは、技術力とはほとんど関係ないと思っていいでしょう。
――うへえ。じゃ、「これぞ技術力の証し」みたいに打ち出しているところはあまり好感が持てませんね。
林:ネットで修理業者の広告を見ると、本当にあざといひっかけが多いです。
個人がデータ修復に大金を払わざるを得ない時代に
――大手IT企業との実績を謳うところもよく見かけました。
林:「実績」と書いているか「提携」「契約」と書いているかはひとつポイントかも知れません。そこの機材をデータ復旧したことがあれば「実績」と書けますからね。
――ちなみに、御社のお客さんの数は、1日何件くらいですか。
林:問い合わせの件数は1日70件前後、年間2万件といったところです。実務のスタッフは全員で20人程度です。
――個人と法人の比率は?
林:7:3で個人が多いです。業務提携パートナーからのご紹介もあるので。
――個人がそんなに多いんですか。
林:そうなんです。10年前は、個人が自分のデータに10万円払うなんてあり得ませんでしたよね。
――確かに。故障したパソコンの修理を頼む際には「データは消滅しますが、よろしいですね?」でした。
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