「他を当たってみようかな…もちろん、今からHDDを返してもらうことはできますよね」

 「はい、もちろんですが、なにせ精密機器ですので、いま、当社のクリーンルームで開封した状態ならば復旧が確実に可能ですが、お戻した後、お客様が次の会社に運んでいる間に何が起こるかはわかりません」

 言葉に特に問題はないのに、なんとなく追い詰められていく。最近流行のランサムウェア(データをロックし、“身代金”を要求する不正プログラム)に取っ捕まったような気分。さりとて、この金額を無断で家に持ち帰る度胸はない私。切羽詰まって、Bさんの前で奥様に電話しました。

小芝居でさらに値切るも…

 「かくかくしかじか。うん、困るよね、高いよね。うん、じゃ、18万円ならなんとかなる? わかった、それでお願いしてみるから」と、小芝居を打ちました。18万円と言ったのは、あと1割くらい引けるんじゃないか、というカンです。

 「分かりました、もう一度、これが最後です。上司と相談して(以下略)」

 と、出て行ったBさん、戻ってきたときは税込みで19万円をちょっと切る見積書を持っていました。

 話がまとまり、無事データは回収されて別のHDDにコピーされ、壊れたHDDといっしょに戻ってきました。ただし、「納期は長くかかる、その分安くなる」と説明していたのに、実際は「30万円」と言われたときと大差ない、2日で届きました。喜ぶところかもしれませんけれど、どうもモヤモヤは収まりません。

 納期を長くしたから安くなるんじゃなかったのか。そもそも、こんなにお金がかかる正当な理由があるのだろうか。最初の見積もりから約12万円安くなったので、ますます「ぼったくり」の疑念が高まります。心理的に圧迫するテクニックを使われたのも気に入らない。

 と思っておりましたら、ひょんなことからHDDの修理などを手がける会社、AOSリーガルテックの方とお知り合いになりました。「社名も堂々と出して、業界事情の説明に応じます」とのこと。ならば是非、いろいろお聞かせいただきましょう。

 意地悪な私は、ついでに、同じ壊れたHDDをお預けして、見積もりを出してもらうことにしたのでした。さて、金額は?

価格を相対で決める余地はあるの?

AOSリーガルテック執行役員・林 靖二さん(以下林):よろしくお願いします。さっそくですが、当社の見積もりはこうなりました。

――お手数をおかけしました。へえ、税込み16万5000円、ですか。

:これには、お渡しする媒体(別のHDD)費が、コピー作業と合わせて1万2000円加算されています。それと、壊れたのがたまたま、当社が提携しているメーカー(今回はバッファロー製だった)さんのHDDですので、3割引になってこのお値段です。それがなければもう6万円ほど高くなりますね。

ちなみに、大手同業他社の価格(参考・取材時点)をネットで調べたところ、次のとおりでした。HDDの状態の呼称は会社によって違うので、Aが最も軽微な障害、B、C、D…と進むほど深刻な状態、として表記しています。たとえばB社の「C」とC社の「C」が同じ状態とは限りません

【B社】
RAID~640GB A:70,000円×2本=140,000円
B:100,000円×2本=200,000円
C:200,000円×2本=400,000円
D:300,000円×2本=600,000円
E:都度見積
【C社】
RAID A:280,000円
B:380,000円
C:460,000円
D:別途お見積り

――なるほど…この金額は、お客さんと相対で調整して決める余地がありますか?

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