
ある日のことです。
15年分の家族写真を入れていた1テラバイト(TB)のハードディスクドライブ(以下HDD)が壊れました。
実は、こういうこともあろうかとRAID構成(※)にしていました。実際、おかげで復旧できたことも2度ほどあるのです。「またか」と思い、時間はかかっても元に戻せると考えていたのですが、今回はRAIDの管理画面すら出せません。電源を入れると「がりがり」と音がして、もはやどうにもならなそうな予感。
「こりゃ、プロの業者さんに頼むしかなさそうだ。たぶん、10万円くらいかかると思うんだけど」と、奥様に報告します。
RAID:複数のHDDにデータを同時に書き込むことで、高速化したり、万一の際に無事なHDDから復旧する仕組み。書き込み方は何通りもあり、「RAID0(ゼロ)※高速化のみ、冗長性はない」「RAID1」「RAID5」などがある。(※RAID0はデータ復旧はできないとの御指摘をいただき、修正しました)
修理に対してこの金額、普段なら「あり得ない」と即断する我が奥様も、さすがに家族写真となると思い切れない様子(ちなみに、もし、子供が生まれる前の写真だったら間違いなく「捨てよう」と言われたはずです)。
修理代金はバカ高くても、家族写真は捨てられない
さて、どこに頼むか。「HDD 復旧」あたりで検索すると、もう山のように業者さんがひっかかってきます。どこもそれなりに実績がありそうで、「まずは持ち込んで無料相談を」と促してくる。予め電話で3つほどに当たりを付け、「10万とは約束出来ませんが、それに近い線でなんとかなると思います」と言われたA社(注:頭文字ではありません)に持ち込んでみました。
行ってみると普通の小さなオフィスビルで、応対もそつなく、HDDを預けると狭い部屋に通されて、そこで待つように言われます。やがて、「担当するBです」と、白衣を着た若い男性が現れました。どことなく白衣が身体に合っていない雰囲気に、ややはったりを感じたものの「ご安心ください、復旧は可能です」とのことでほっとしました。
が、示された見積書の金額を見て唖然。
え、30万円!?(注:金額は実際の額に沿っていますが、大まかなものです)
思い出はプライスレス、30万でも50万でも価値としてはそれ以上、とはいえ、お金はお金です。いくらなんでも高すぎる。あれこれ交渉すると、納期に余裕を見てくれれば価格を下げる余地がある、という。なんなら半年かかってもかまいません、と伝えると、「では上司と相談して参ります」と部屋を出て行くBさん。
奥様に状況をメールで説明していると、Bさんが戻ってきました。
「お待たせしました。RAID構成のHDDの復旧は大変なのでどうしても料金が上がるのですが、上司と交渉しまして、22万円にすることができました」
疑心暗鬼、どこかに隠しカメラが?
まだまだ高い。それに、いきなり8万円も引いてきた豪快さにかえって懸念を感じます。もしや「ぼったくり」に引っかかりつつあるのでは。ああでもない、こうでもないと食い下がると「わかりました、もういちど上司と交渉してきます」と、ふたたびBさんは部屋の外に出て行きました。これ、大昔の自動車セールスみたいじゃないか。上司が隠しカメラでこの部屋を見ているのでは、と、きょろきょろ探してしまいました。
「20万円になりました。もう無理だと上司も言っておりまして、なんとか決めて頂けないでしょうか」
と、戻ってきたBさん。狭い部屋で延々待っている間に、だんだんこちらの気持ちも弱くなってきて「とにかく、一刻も早く話を終わらせて、すぐにこの部屋から出たい」と思い始めています。初歩的なテクニックですが、「狭い部屋に缶詰」って、効きますね。
しかし、このままでは終われません。
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