安彦:それって、自分の事業部や製品分野の中で発想を止めがち、ってことですよね。じゃあ、新しいことを始めて動き出すとき、仲間を増やし、理解してもらうとき、一番大事なのは何かと言えば、やっぱり「これをやると、誰がどうして幸せになるのか」だと思いますよ。どこの本にも書いてある、事業を作る際には超当たり前のことですが、やっぱり重要。俗に言う「Who will be happy? Why?」ですかね。
あまり起業本を読んだことがないので、その言葉の安彦さんの解釈をおしえていただけませんでしょうか。
ニッチでもいい。そこからストーリーが始まる
安彦:私も起業本はほとんど読んだことが無いのですが(笑)。そうですね、ニッチでいいから「本当の幸せは何なんだ」と、そこから考えることじゃないかと思います。
YさんにはYさんの、俺は俺の幸せがあって、例えばアニメが好きで、その好きなアニメをきっかけに旅行ができたらもっと楽しくて、その旅行が面白くなるツールがあったら超楽しいじゃん。「もう、俺、毎週でも旅行、行っちゃうかもしれないよ」と。それは生活が豊かに、楽しくなる。ニッチなんだけど、その人たちが幸せになれるよね、という。「舞台めぐり」は、位置情報やAR、ゲーム要素を盛りこんでいるけれど、技術があって、さてどうしようか、ではなくて「こうすれば幸せになる、ではどの技術を使おうか」でやっているのが、ユーザーが増えている背景にあると思うんです。
面白いですね。以前、日経ビジネスオンラインのインタビューで、「ソニーは技術の会社と社内外から思われているけれど、そこが間違いの始まりだ」というOBの方のお話がありました。技術そのものよりも、技術を「面白そう」に見せることに長けた会社だったはずだと。
安彦:その方がどう思われたのかは分かりませんが、自分は技術者のひとりとして、「今どき、技術なんて後からついてくるよ」とは思っています。世界一の技術で作られたハードウエアでも、そこにストーリーがあり、生活の中に入っていく動線がつながっていないと、そのハードは使われなくて終わっちゃう。そのサービスがソニーになかなか生まれない。ならば、俺はそれをつくってやろうと。
おお。
安彦:そのためには、小さくてもニーズがあって、そこに確実な、コアとなるファンがいるのが見えていることが重要です。100人でいいから毎日使ってくれそうな人がいるかどうかというところをいかに見つけるか、だと思います。100人のファンって小さいと思うかもしれませんが、あのAKB48も最初に秋葉原でデビューした頃は、コアなファン100人もいなかったんじゃないでしょうか。じゃあ、そこからどう広げていくかですが…
おっと、その先のお話は、東京ゲームショウで聞かせていただくとしましょうか(笑)。
Powered by リゾーム?