安彦:提案する内容よりも、自分が賢いことをPRしたいんです。

またまた、身も蓋もないですね。

安彦:でも、やっぱり分かってもらうべきなのは自分じゃなくて商品です。もし、社内のキーマンに「分かったけど、うちの環境じゃできないな」と言われたら、「じゃあ、ちょっと外に持っていっていいですか」と言いやすいじゃないですか。相手だって「そうしなさい」と言いやすい。実際にそうしたわけですが。

響く人に響く「舞台めぐり」

お話を戻しますが、アングラ活動だった「舞台めぐり」は、最初、仲間は何人くらいいたんですか、もしかして、安彦さんおひとり?

安彦:違います。「舞台めぐり」に関しては初めから7人ぐらいいました。

え、そんなにいたんですか。

安彦:というのは、これ、響く人には響くんです。

なるほど、響くでしょうね(笑)。

安彦:分からない人には絶対に分からないんですけど、響く人には響く。ですので、いわゆるオタク界隈の人は「聖地巡礼支援アプリを作ろうと思う」と言った瞬間に食い付いてきて、「俺もやりたい」「手伝おう」と言ってくれた人がもうばんばん増えていったんです。

ソニーのいろいろな部署にいらっしゃった。

安彦:そうです、最初は7人。プラス、リンクさんに2人かな。あっという間に20人ぐらいにはなりましたけど。そこで、業務時間外でアプリを開発して、リンクさんからβ版をリリースして。企画として立案したのが2012年の3月くらい、実際に開発を始めたのが9月、そして、リリースが2013年の3月ですね。

さっきもお聞きしましたが、アングラ活動とはいえ、リリースするとなるとさすがに上司に内緒ではできませんよね?

安彦:はい、最初に「これをソニーで出したい」という交渉を社内でしたんですけど、これをソニーで出す意義が分からない。なので、ソニーの名前では出しづらいと言われたので、じゃあ、これそのまま座組そっくりアニメイトさんに持って出していいですか? と聞いたら、それなら、ちゃんと契約を結べばいいよと言われたので、リンクさんから出した、という流れです。

「ガルパン」との縁はどうやって?

最初に出されたのは「ガールズ&パンツァー」ですよね。茨城県大洗町というご当地、美少女、学園、ミリタリーと、願ってもない題材を1発目から持ってくることができたわけですが、これは。

安彦:それは、このアニメの宣伝プロデューサーさんと、ブルーレイ化プロジェクトの縁で仲良くしていただいていたのです。「こういう聖地巡礼のアプリを作るんだけど、何かいい題材ない?」と言ったら、「ちょうど今度、冬から放送が始まる『ガールズ&パンツァー』という作品があるんだけど、これが大洗という町を舞台にしようと思っているんです。どうですか?」と言われて。

渡りに船というか、渡ろうと思ったら高速道路ができたって感じですね。

安彦:しかも、バンダイビジュアルさんのオリジナルだったので、コンテンツ利用の自由度もすごく高かったんですよ。よしきた、じゃあ、それでもうがっつりそれ専用のアプリで立ち上げちゃおう、と。

すごい、超の字が付く幸運という感じもしますけど。

安彦:本当にそうですね。幸運はあります。いろいろな意味で偶然が重なって今になっているなというのは僕自身もすごい思っています。

でも、動かなかったらその幸運自体が生まれないわけですからね…。まさにジョブズの言う「点を線にする」話ですね。大きな会社の中に居ると、仕事の文脈が予め成立しているから、いまさら自分で線をつくる発想が生まれにくいのでしょうか。

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