安彦:ありますよ(笑)。「やってみたい」は重要ですけれど、それだけでは、他の人が買ってくれる商品にはなりません。「わかってもらう」ことは、買ってもらうための第一歩です。

 環境が整わない、状況が許さない、という人が多いんですけれど、だいたいの場合、その「環境」って、目の前の上司だったりしますよね(笑)。つまり、偉い人を抱き込むのも、環境を変え、商品化につなげて世に出すための1つのステップであり、そこにはテクニックがあるんです。

いきなり身も蓋もなくなってきました。

安彦:チャンスは逃がさない。チャンスを増やすためにコネをつくっていく。これは重要です。本当に売れるもの、成功するものって、パートナーが必ず見つかります。だから、社内だけではなく、外の人にも機会を見つけて話をしてみるべきです。

なるほど。それで、売れるかどうかも見当が付く。

安彦:実際、ソニーの中では「聖地巡礼」はなかなか認められなかったんですけど、アニメイトのグループ会社のリンクさんと話をしたら、「ぜひやりたい」と言ってくださって、当初はリンクさんからリリースさせていただいたわけです(2013年3月「舞台めぐりβ ガールズ&パンツァー編」)。

社内で分かってくれなくても、外部がやる気になってくれれば、やっていることが正しいと信じられますね。

安彦:それを経て、やっと2年前から、ソニー企業で事業としてやれることになったわけです。

 話を戻しますと、「分かってくれない」で止めちゃダメです。分かってもらえなかったのは自分の説明が悪いことが多いんですよ。「分からん」と言われちゃうと、ああ~って、凹んで、人の不勉強のせいにしたくなりますよね。でもそれって空しい。

人に「分かった」と思わせる説明のコツ、ポイントみたいなものってありますか?

安彦:ありますよ、すごく。その手法は説明する相手によって変わります。従って事前のリサーチがとても重要です。例えば僕らだったら、キーマンに会うときは必ず、この人は何が趣味なのかをしっかり調べるんですね。

おお、そうか!

決め手は「あるある」

安彦:はい。その人が趣味にかかわるもので、例えば聖地巡礼なら聖地巡礼にこじつけられるようなものを……。

説明する相手の人にとっての「あるある」を見つけるんですね?

安彦:そうなんですよ。「ああ、こいつが話しているのは、俺の知っているあれか」と思ってもらえればしめたものです。実例で言えば、とあるキーマンの方は、ベトナムの某映画が大好きだということを知りましたので、その映画の話を取り入れて、「こういうシーンに行ってみたいと思いませんか」とプレゼンしたら「あっ、俺、ここ行ったんだよ」と。

うひゃー(笑)。

安彦:すでに聖地巡礼していたんですね、その方。そこで一気に分かっていただけて。「これは確かにニーズあるよね。俺もベトナムまでわざわざ行ったからさ」って。

それは、とんでもない成功例ですね。

安彦:そう。うまく行きすぎです。が、「うまく行きすぎ」ということが、ちゃんと準備して説明することで、やっぱり実際に起きるのです。「自分の考えたものが偉い」と思っちゃだめで、「自分がやりたいものを、“この人”に伝えるときには何を言ったら響くか」というところを、どこまで考えるか、だと思います。商品化の時も基本的には同じで、その範囲が少し広がるだけですよ。

確かに。言われてみれば当たり前なのに、あまり「実際に説明相手の趣味を調べて会わせ込んだ」という話は聞かないですね。理屈はこうです、止まりで。

安彦:やらないんですよ。というのは、みんな自分が好きなんですよ。私もそうですが(笑)

うわあ、本音が(笑)。

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