あっ、制作会社のピーエーワークスが現地にあるんですよね。ご当地アニメのはしりでしたでしょうか。これはまた、聖地巡礼とすごく相性が良さそうな。

安彦:そこまで考えていたわけじゃないのですが、この作品のファンの方に連れられて、初めて自分も“聖地巡礼”を体験したんです。

いつ頃ですか。

安彦:2011年の末だったと思います。せっかくコアなファンと、ブルーレイディスクのサイトを通じて繋がりができてきた。そして、聖地巡礼という楽しみ方も知った。ならば「彼ら彼女らが、もっと面白がってくれるサービスを1個作ってみようぜ」と考えて、社内で位置情報やビッグデータ関連の開発者、ヘルスケアのチームや、もちろんSCEの人と……

またまた仲間を増やし始めたと。

安彦:今回はコンテンツはアニメで、社外ですから、どこと組めばいいのか、どうやって交渉するかも考えねばなりません。ここでは、ブルーレイ化で、アニメーション業界の方と仲間になっていたことが効きました。

仲間を増やすには「仕事」っぽさは抑え目で

なるほど、分かってきました。「やる気」を持続させるには、ひとりで頑張るよりも「仲間」を増やすことが重要なんですね。じゃあ、その仲間を増やすときのコツって何ですか。

安彦:まず「目的はこれだ」と、明確に伝えてあげることが第一なんですが、僕の方法論では、「仕事」っぽくしないところが大事じゃないかと思うんです。

仕事っぽくない、というと…。

安彦:適度な気安さというか、きっちり、かっちりしないことかな。すでにシナリオが決まって、あとは資金を、受注を取ってこい、というお話だったら、むしろきっちりした服装でかっちりしたマナーで売り込みに行けばいいんですけれどね。そうやって「仕事」で会いにいくと、相手側も仕事としてしか受けないんですよ。仲間、味方にはなかなかなってくれない。で、いくら稼げるの?、という反応になってしまう。

 仲間を作るには、「こういうことが出来たら、絶対に面白いと思わない?」くらいで、相手のパッション、情熱に呼びかけるようなアプローチのほうが有効ですね。あとは、そういう声を上げる、声を掛ける勇気でしょうか。

勇気か。ここが難しい。最初からそういう方だったんですか、安彦さん。

安彦:まあ、何でしょうか、言いたいことは言う人間かもしれません。

言いたいことは言う(笑)。

安彦:はい。でも別に自分が言わなくてもいいんですよ。言える人を捕まえてくればいいだけの話なので。

ああ、なるほど。

安彦:言えそうな人、この人が言えば伝わりそうな人に、味方がいればいいだけなので。そういう人も巻き込んで、その人が、「マジか、それ、超いいじゃん、俺がちょっと広めるよ」って言ってくれれば、やってもらえばいいんですよ。誰もが、自分が得意なところでうまくやっていけばいいだけの話です。

キーマンに分かってもらう方法、教えます

とはいえ、話しても分かってくれない場合もありますよね。とくに上司、キーマンが。

安彦:もちろんです。「舞台めぐり」もずっとそうでした。「なるほど、面白そうだ。でも、ソニーがなぜこれをやる必要があるの?」と言われ続けましたから。

 昔からよく使うロジックなんですけれど、脳みそってすごく賢くって「できない」と思ったら、「できない理由」や「言い訳」をぱっと考えつくんです。逆に「できる」と思ったら、突破口を一生懸命考えて見つけ出す。だから、「できる」と考えないと脳みそがもったいないんですよ。

でも安彦さん、おそらくもっと具体的な「分かってもらう」対処法をお持ちでしょう。

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