清水:これってめちゃくちゃ文化が逆転しているんよ。少なくともスターバックスに行ったら、ソイラテの方が1杯50円高いんや。それでも伸びているんやで。ということは、これをおいしいと感じている人がいてるわけやね。

 ソイラテとカフェラテ、味は明らかに違いますからね。

清水:ということは、豆乳の味が評価されている。牛乳のサブだったり、代替だったりということではないねんね。そういう時代が来ている。

 なのに、肉の色を付けてヘモグロビンまで入れてやるのが、インポッシブルバーガーがやっていることですわ。あれってどうよ、そんなことまでせなあかんかと。おいしい大豆をおいしく食べればいいじゃないか、というのが大豆ミート。さらにUSS製法やろな。でも、USSではなかなか肉のようには(食感が)ならんから、むしろチーズとかクリーム、つまりビヨンドミルクの方にいっているわけやね。それがうちの今の打ち出し方ということですね。

大豆から作られた「ビヨンドミルク」食材の一例。食感や風味はあっさり目のチーズ。(写真提供:不二製油HD)
大豆から作られた「ビヨンドミルク」食材の一例。食感や風味はあっさり目のチーズ。(写真提供:不二製油HD)

 ビヨンドミートといっても、肉そのものだけではなく、いくらでもやり方はあるってことですか。

清水:あります。

「食の保守性」を乗り越えられるか

 うーん、お恥ずかしいのですが、やっぱりいつの間にか「肉は、大豆は、こういうものだ」という固定観念が次から次へと自分の中に生まれて、その中でしか考えなくなっちゃうんですかね。

清水:それ、一言で言うと「食の保守性」ですわね。新しい食べ物はそう簡単には受け入れられない。でも、まじめに言って、世界全体の食糧事情の変化や、世代の嗜好の変化をうまく読み取って保守性を乗り越える手を打っていったら、ビジネスとしても可能性は大きいですよ。

 ウチの現状(2018年3月期で売上高3076億円)から、僕は目標を5000億円とは言っていますけど、この先1兆円になる5000億円なのかもと思います。5000億円で終わる5000億円なのかもしれませんが、僕は、当然その結論を見るまでもなく死んじゃうんですけどね。でも、この会社が持っている潜在能力は、うまくすると1兆円を狙えるような、つまり国際企業、グローバルカンパニーと言われるところはだいたいその規模なんですが、そういう会社になれる可能性を持っているんですよね。もちろん、山ほど課題はあるんですけど、僕はそう思っているんです。

 課題とは、たとえば。

清水:当社の例で具体的に言うと、素材とメニューと分けて考える能力があまりないんですよ。

 ええと……?

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