(前回はこちら。不二製油グループ本社の業容、業績などは第1回からどうぞ)
清水:でも、本当、何遍も言いますけどね、創業してからすぐ、こんなにもうからへん(大豆からタンパク質を作り出す「大豆たん白」事業の)仕事を始めて、今まで50年もやってきたというのは、本当に先輩たちがよく我慢したと思いますよ。これはもう本当に感謝以外にないよね。
ただ、歴史観は歴史観としまして、大豆を多くの人々のたんぱく源にしていこうというならば、合理性や安全性だけでは片付かない大きな問題がある。これは、食べ物だからこその理由なんやけどね。
なんでしょう。
植物由来の食品が、動物由来に負ける点
清水:味です。
あ、そりゃそうか。薬じゃないですからね。
清水:そう、薬なら苦かろうがまずかろうが仕方ないけど、食べ物はおいしくないといかん。大豆たん白由来の食品が、動物由来の肉とか乳に劣っているところはどこだというと、味なんですね。
……しかし、はっきりおっしゃいますよね。
清水:だってYさんもみなさんもそうでしょう。もちろん私も含めて、人間は、残念ながら「必然性があればまずくてもいいわ」とは、いけへんわけですよ。人間はおいしいかどうかを評価して、おいしくなければ食べない。はっきりしています。
「牛を育てるにはどれくらい地球環境に負荷がかかると思っているんだ」とかお説教されても、「でも、できれば、おいしいものを食べたい」と思う。
狙い目は肉よりチーズじゃなかろうか

1977年同志社大学卒業、不二製油入社、油脂販売部に配属。89年蛋白事業本部企画室、91年大豆多糖類事業化推進プロジェクト、その後新素材事業部長兼販売部長、食品機能剤事業部長を経て2004年、取締役就任。13年に代表取締役社長就任、2015年より現職。(写真=今 紀之)
清水:そして、1回おいしいのを食べるとなかなかまずいものにいけない。ということになっていまして。おいしさが重要、ということになると、重要なのが油脂。油脂の働きは極めて大きいですね。たとえば霜降りの肉はおいしいのはこれです。やっぱり「脂のうまさ」というのはすごくあるわけですね。
ですから、おいしさの部分は油脂の力を借りる。USS製法(豆乳の脂質分とその他を分離し、コクのある成分を取り出す製造方法)で作った、大豆由来の油分が切り札になると思います。余談ですが、今、DHA・EPAの事業も始めましたけれど、あれも脂ですからね。みなさん、原料は魚だと思っていますが、あれは魚が食べた海藻に含まれるもので、うちのは藻類から直接取っています。
不二製油として、大豆タンパクを味の方で受け入れやすくする方法論を使えば、肉に変わるものができるんでしょうか。
清水:今のところは、僕は狙い目はチーズだと思っているの。ミートじゃなくて、「ビヨンド・ザ・ミルク」。だからビヨンドミルクでチーズをつくっているんですね。一方では、うちが提携している相模屋食料は豆腐で「ビヨンドとうふ(BEYOND TOFU)」をつくっているわけ。豆腐も肉も非常に一般的な食品。しかも食材として確固としたものですから、このへんから突破口が出てくるんじゃないかと思います。
もちろん古くからの商品として、“大豆ハンバーグ”みたいなものがラインナップにあるのは存じていますが、ここまでおっしゃる割に、「肉」そのものの代替品に大豆でダイレクトにいくぞ、という雰囲気が感じられませんね。なぜなんですか。
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