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清水:そう、大豆油の絞りかすである脱脂大豆の有効な使い道を考えていて、大豆蛋白事業につながっていったんやね。ということで、私の中では四半世紀、会社としての不二製油は、もう50年から研究をやっている。ちなみに社内ではタンパクと書かずに「たん白」なので、合わせてもらえる?

分かりました。でも、事業としての大豆たん白ですが、はっきり申し上げてずっと不二製油にとっての「お荷物」になっていた印象もあります。「なぜ見切らなかったのか」と、取材させていただいたときに考えました。

清水:考えますよね。これは思い出話ですが、私がまだ部長くらいの時に専務をやっていた方……この方は技術者で、大学から入ってからずーっと大豆たん白を担当されてました。この方に先ほどの西村が「君の子どもの時代には、僕が言っていること、やっていることはおそらく理解できないと思う。君の子どもに子どもができたときに、ちょっと分かるはずや」と。その「君の子どもの子ども」が今中学生くらいなんですが、その子が物心ついた頃に、大豆がブームになりかけているわけです。

「分かりました、やっと分かりました」

清水:さっきも(前回参照)言ったけど、やっぱり歴史観ですね。本格的な経営者は、50年100年ぐらい先を見ているんでしょうね。「商売になれへんでもええんやこれは。そのうち、絶対俺が言うてるような時代が来るぞ」みたいな話になるわけですね。

 これは参ったなと言うてたら、反応したのが社外取締役の三品教授(三品和広・神戸大学大学院経営学研究科教授)で、「分かりました、やっと分かりました。不二製油、どうにも分かりにくい会社やったけれどそういう人がいたんや。そういう人が居たから今日までこういうことになっていたんや」と。

経営指標から考えると不合理な事業を、どうしてやり続けることができたのかと。

清水:そう、アナリスト的な視点からはわかりにくい。「あの大豆たん白に費やした経費、人材、工場、あれがなかったら不二はもっと大きくなっていた」という人はたくさんいます。でも、私に言わせると、アレがなかったら早くダメになっていたと思う。

そうですか。

清水:もう、こんな昔から、人口問題や食糧問題まで認識して、今後、三大栄養素の中で一番供給が困難になるタンパク質の供給源として、大豆たん白に注目し、大豆で世のため人のために貢献する……もちろん当たれば大きなビジネスチャンスでもあるわけですが、そこを結びつけて世の中に打ち出している会社なんて、そうはなかったと思うんですね。これがあったからこそ、そこでは儲かっていないかもしれないけれど、働く人のものの見方とか考え方が、非常に革新的にできあがってきた、少なくとも、その可能性はあるのではないか。

 ただ、三品さんとお昼食べてたら「でもね、清水さんね、松下幸之助を調べていくと、200年後の日本が出てくるよ。清水さんのところは50年かな(笑)」ちくしょー、と(笑)。

200年ですか(笑)。凄すぎてなんだか笑ってしまいますね。

清水:でも、本当、何遍も言いますけどね、創業してからすぐ、こんなにもうからへん(大豆からタンパク質を作り出す「大豆たん白」事業の)仕事を始めて、今まで50年もやってきたというのは、本当に先輩たちがよく我慢したと思いますよ。これはもう本当に感謝以外にないよね。

 ただ、歴史観は歴史観としまして、大豆を多くの人々のたんぱく源にしていこうというならば、合理性や安全性だけでは片付かない大きな問題がある。これは、食べ物だからこその理由なんやけどね。

なんでしょう?

(次回に続きます)