(前回から読む:不二製油グループ本社の業容、業績などもこちらから)

清水社長は、経営には歴史観が必要だとおっしゃる。その歴史観に基づく施策で、ご自分の会社でどんな打ち手をするかというと、「大豆」だと。

清水:はい。

大豆、というと、あの大豆ですよね。茹でれば枝豆、味噌にお豆腐の原料になるという。

清水:そう、日本人ならみんな知っている大豆はね、ものすごく変わった豆なんですよ。

え、どこが。

「大豆」はどこがヘンなのか

<span class="fontBold">清水 洋史(しみず・ひろし)不二製油グループ本社社長</span><br />1977年同志社大学卒業、 不二製油入社、油脂販売部に配属。89年蛋白事業本部企画室、91年大豆多糖類事業化推進プロジェクト、その後新素材事業部長兼販売部長、食品機能剤事業部長を経て2004年、取締役就任。13年に代表取締役社長就任、2015年より現職。(写真=今 紀之)
清水 洋史(しみず・ひろし)不二製油グループ本社社長
1977年同志社大学卒業、 不二製油入社、油脂販売部に配属。89年蛋白事業本部企画室、91年大豆多糖類事業化推進プロジェクト、その後新素材事業部長兼販売部長、食品機能剤事業部長を経て2004年、取締役就任。13年に代表取締役社長就任、2015年より現職。(写真=今 紀之)

清水:どこか。大豆の成分の30%はタンパク質、そして、20%が油脂です。タンパク質が多いのは、エンドウ豆とか緑豆なんかもそうなんですけれども、油脂が20%も入っている豆なんて大豆以外にはない。油脂が2割にタンパク質3割、これ、何かいうたら、卵や筋肉とかですね。

あ、だから「大豆は畑の肉」なのか。

清水:さらに、世界中で栽培できて、しかもYさん、大豆は一年草なんですよ。

「一年草」、ということは?

清水:栽培地を選ばず、一年草だということは、凶作で収穫できない地域があったとしても、別の地域では実をつけている可能性が高い。収穫は1年ごとに繰り返すわけですが、ずっと凶作が続くことはあまりないです。ということは。

そうか、安定した供給が期待できて、栄養価も高い、と。頼もしい植物だってことですね。

窒素をどこから持ってくる?

清水:しかも、これはYさんも勉強されたかもしれないけど、人間に必須の栄養素、タンパク質をつくるということを考えてみてください。

 でんぷんも油脂も、化学式は炭素と水素、CとHやね。それから酸素。CHOの3つでできています。そこからタンパク質をつくるにはさらに窒素、Nが必要なんです。

タンパク質は、えーと、アミノ酸でできている。

清水:そうそう。ざっくりですが、基本構造がカルボキシル基(-COOH)とアミノ基(-NH2)、それがペプチド結合してできてるのがタンパク質やね。

 人間の筋肉の基本材料はタンパク質ですから、体をつくるためにはタンパク質が欠かせない。そしてタンパク質をつくるには窒素が必要。じゃ、タンパク質を持ってる大豆は、窒素をどうやって豆の中に取り込んだんや、どこから来るねんいうたら、空気中。空気はご存じのように8割が窒素で2割が酸素でしょう。窒素はなんぼでもあるわけね。

次ページ 火を使える生き物だけが手に入れられる……