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清水:ところが、問題は「40年、50年前はそやったけど、今どやねん」ということですね。半世紀あまりを経て、人も組織も、もう、保守的な側面がいっぱいある会社になっているわけですよ……というのは、ちょっと劇的に言い過ぎたかもしれないけど、これではどうも、うちのDNAは本当には活かしてないよねということ。

 もうひとつは、さきほどの歴史観。歴史観という視点で、不二製油と、不二製油が本社を置く日本とを重ねてみましょうと。

といいますと。

清水:日本の1960年代、70年代というのは、「いかに変化するか、革新をしていくか」ということが、日本という国の命題でもあったし、企業の命題でもあったんです。

不二製油を始め日本企業が革新を果たせたのは、時代の追い風もあったと。

清水:うん、ちょっと話が大きくなっちゃうんだけど、我々は油脂産業の中で非常に新しくて革新的な存在だったんだけど、こうした高度成長のうまい汁を吸ったおかげで早く大きくなったことは間違いない。そしてもうひとつ、我々に有利だったことがあります。

経済成長以外にですか、なんでしょう。

勢いのあるところに付いていけ!

清水:もうひとつはね、業界の先輩たちが先に失敗してくれたので、その轍を踏まずに済んだことです。

あー。聞いたら書いちゃいますよ。

清水:ほんまのことですからね。僕は会社入ったときに、組合をやってまして、業界他社さんの給与の数字を見るわけです。日清さんとか豊年さんとか、大手さんは当時、僕らの給料の1.5倍ありましたから。不二製油は、会社入るときは大阪二部の株価80円とかですよ。もう相手にもされない会社で。そらもうまったくブランド力も……これはいまでもそうですけれど(笑)段違いです。それがこうなった。

出所:公開資料を基に日経ビジネス編集部が制作。上に行くほど利益率が高い。不二製油グループ本社は顧客である菓子、食品メーカー並み。円の大きさは売上高。
出所:不二製油グループ本社(こちら

上のグラフは2016年に記事を書いた時のものなんですが、「製品のコモディティー化に苦戦する油脂メーカーの中では飛び抜けて高い利益率を確保している」と説明を付けました。BtoCメーカーにとって欠かせない素材・技術を持つ位置に立ったわけですよね。

清水:「BtoCで一生懸命お金かけてブランド維持してもなかなか大変やな。うちらみたいな弱小はやっぱりBtoBで日本の元気なところにいけ」と。「勢いのあるところに付いていけ」というのが、うちの営業のセオリーですから。ダメになっているところに行くなと。

えぐい。

清水:えぐいねんけどね、正しいですよね。大手(の同業油脂メーカー)さんは、高度成長期の家庭消費の拡大に合わせて業績を伸ばされたけれど、消費者の需要が加工食品やお菓子メーカーさんの商品を買う方にシフトしていった。そうするとですね、1980、90年代で一息ついちゃうんですね。リーマンショックに行くまでもなく。

 加工食品はいろいろな食品がありますから、切り口を変えて伸びることができる。我々は、チョコならあそことあそことあそこに付いていけ、大豆たんぱくだったらあのメーカーとあのメーカーさんに付いていけ、で、売り上げを伸ばせました。彼らが年率何パーセントで伸びている時代ですから、原料も伸びるじゃないですか。そしてサバイバリストである不二製油には、変なプライドも縛りもない。だから、お客様のニーズにひたすらお応えすることができた。

そのころ清水さんは営業をされていたのですよね、この手法には弱点はなかったのでしょうか?