昨年夏からNHK総合で放映が始まった「サンダーバード ARE GO」(原題は「Thunderbirds Are Go! 」、以下TAG)。50年前の「サンダーバード」は人形劇だったが、今回はCGと模型の合成だ。

 懐かしさに惹かれて、ご覧になっている私と同世代の方も多いのではなかろうか。そして「いや、あれは人形劇だからいいのであって」とお思いの方もいらっしゃるだろう。

 実のところ自分もかなり斜めから見ていたのだが、子供に引っ張られて見始めたらこれが面白くてやめられなくなった。そこそこ筋金入りの旧作ファンが、手もなくひっかけられてしまったこの“リブート版”サンダーバードは、いかにして生まれ、日本で放映されるに至ったのか。「50年振りの新作」の舞台裏を伺ってきました。(Y)

©ITV Studios Limited / Pukeko Pictures LP 2015 All copyright in the original ThunderbirdsTM series is owned by ITC Entertainment Group Limited.
©ITV Studios Limited / Pukeko Pictures LP 2015 All copyright in the original ThunderbirdsTM series is owned by ITC Entertainment Group Limited.

日本放送協会(以下NHK)編成局展開戦略推進部・土橋圭介チーフ・プロデューサー:よろしくお願いします。

―― 今回のTAGのお話は、どういう風に動き出したんでしょうか。

土橋:「サンダーバードが50周年を機会にリブート」という企画自体は、6年くらい前から動いてましたよね。

東北新社・有吉篤史版権営業部次長(以下有吉):そうですね、エグゼクティブ・プロデューサーのリチャード・テイラーが具体的に着手したのが2011年、「サンダーバード」の権利を保有する英国のテレビ局、ITVがゴーサインを出したのが2013年。僕が2013年に「サンダーバード博」を日本科学未来館でやっているときに、ITVとの打ち合わせで「パイロット版だよ」と見せてくれたのが、個人的には初めてでした。

NHKエンタープライズ・藤岡久子 グローバル事業本部国際展開センター・購入・展開チーフマネージャー(以下藤岡):2014年秋の、仏カンヌで開催された世界最大のテレビ番組見本市、MIPCOMで、ビジネスとして世界的にお披露目になりました。どーんとやるぞと。

―― 日本でのこの作品の配給や商品化などの権利は、50年前と同じく東北新社さんが取られて。

有吉:ええ。

―― 「新作が出たら取るぞ」という感じで待っていたわけですか。

有吉:出たら取るというか、「死んでも取ってこい」と。

実は、NHKと東北新社が権利を争っていた

―― そりゃそうですね。御社のCI的なコンテンツですからね。この50年の歴史は、コンペの際には考慮してもらえないんですか。

有吉:気持ちとしては「また東北新社になるといいね」くらいは思ってくれたみたいですが、そこはシビアな感じです。いくつかライバルも存在していたみたいで。

土橋:そこにはNHKエンタープライズという会社もいたわけで。

―― えっ。

有吉:あはははは。今はニコニコしているけれど

土橋:当時は、お互い、テーブルの下で足を蹴り合っていたという(笑)。エンタープライズはNHKが海外から番組を購入する際の窓口をしているんですよ。だからNHKの意向を受けて、ITVに直接オファーしてたんですよね。でも、「東北新社さんになりました」と藤岡から聞いて、「ああ、結局負けたんだ」と。

―― NHKも相当前のめりだった?

土橋:決して前のめりだったわけじゃないですよ(笑)。通常の交渉過程を踏んだだけです。

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