三木:そこが僕ももっとも心配していたことなんです。ですから、僕は経理や会計などのタスクはいまはすべてコンサル会社にアウトソーシングしています。銀行の通帳も全部、その会社に渡しています。

―― ああ、会社の経営にはあまり興味がないと言うことですよね。

三木:独立したのに、僕のメイン業務が経理や経費精算だと、この会社は潰れますから。

―― そりゃそうですね。でも、そのコストはかかるじゃないですか。

三木:かかりますよ。がっつり払っています。でも、そのかかるコストよりも良い仕事をすればいいので、大丈夫です。

―― 独立するときに、不安はありませんでしたか。

三木:さっきの話を引用するなら、元上司の鈴木に話をする時点でも、そもそも僕はなんの目算もなく相談してました。最悪、「喧嘩別れして放逐されて、裸一貫で路頭に迷う」可能性だってありました。……まあ、でもそれはそれでちょっと求めていたところがあって。

―― といいますと?

オデッセイに学ぶ、編集者の本領

三木:僕が、KADOKAWAや電撃文庫編集長という肩書きがない「ただの編集者」になったとき、今までのように市場にインパクトを与えるコンテンツをつくることができるのかどうか、それを試したい。自分の腕はどこまで通用するのか、それを見てみたいと思っていました。いや、われながらバカなのですが。

―― なるほど。恐ろしいですね。

三木:でも、そのほうが「面白そう」ですよね。たとえば、最近ですと「オデッセイ」という映画がありましたよね。

―― はい、火星にひとり取り残される宇宙飛行士の。

電撃文庫『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4048671804/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=n094f-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4591128601" target="_blank">俺の妹がこんなに可愛いわけがない</a>』(伏見つかさ著、イラスト/かんざきひろ)累計500万部
電撃文庫『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(伏見つかさ著、イラスト/かんざきひろ)累計500万部
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三木:原作『マーシアン(The Martian)』を書いたのはアンディ・ウィアーという、SF好きのプログラマーです。彼が勝手にネットで連載していた小説に読者が集まって、これ本にならないんですか、と言われたので、アンディが「わかったタダで作ってあげるよ」と、フリーの火星の写真を使ってキンドルで配ろうとしたら、キンドルの仕組み上、タダでは出せない。そこで、最低価格の99セントにして、3カ月で3万5000部ダウンロードされた。

―― へー!

三木:それで話題になって、ペーパーバックが出て、ハリウッドメジャーから声がかかって映画になりました。こんなふうに、コンテンツはいつどう生まれるのか分からない。それを見つけ出すのが編集者でありプロデューサーの腕の見せ所だと思います。そういう意味では、最初にアンディに声をかけたハリウッドのプロデューサー、もしくはエージェントが最強なわけで。そういう感性の勝負を、もう一回やってみたいと思ったんです。

 さっき、社内ベンチャーの話が出ましたが、「いつ回収できるか分からないお金を使う」というのは、出資する側から認められにくい。この前、堀江貴文さんが「ロケットで56億円詐欺に遭った」という記事に対して、ご本人は「投資家は、そもそも詐欺に遭ってナンボなんだ」と言っておりまして、「なるほど、それは正しいな」と感じました。

―― 事業家としてはそうかもしれません。

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