―― 主役を自分から家族に変えていく。

三木:僕は結局、そういう考え方の変化に対応できなかったんです。いや、僕にも(本当の)家族はちゃんといるんですが(笑)、部の経営としての、という意味ですね。組織として、自分はダメだった。要は、うまく現場編集から管理職編集になる変化ができなかったんです。もちろん、そう思っても頑張って仕事をするわけですが、結果的には芳しくありませんでした。

―― 売上高のことを言うのならば、ライトノベルのマーケット自体もシュリンクしてますが。

三木:僕はそういう市場トレンドも含めて編集長の責任だと思ってます。編集者たちに有効なことを教える時間もなかったですし、厳しい環境下でも「もしかしたら何かできるかも」と思う人達が会社を引っ張っていくんだと思います。まあ、僕はできなかったんですけど(笑)。

―― なんだか後ろ向きな話をお聞きしてすみません。ご自身ではいつぐらいから独立を。

三木:ええと、漠然と思ったのは去年の夏から秋だから、半年くらい前でしょうか。

―― そんなに前の話ではないんですね、きっかけは。

三木:(管理職が)あまり向いていないなと思い始めたときに、「自分に向いているものって何だろう」と考えて、自分だったらこういうこと、ああいうことができるかも……と想像していました。今のポジションより、もうちょっと自由に使える資産や時間や場所があれば、もっといろいろなことができるなと考え始めたら、もうそっちのことばかり考えるようになってしまい……。

―― なるほど。

社員の方は、寝ていてもいいんです

三木:電車ですれ違った人に一目惚れして、一日中頭に残って他のことに手が付かない、みたいな。これでは仕事に支障を来す、と思いましたね。なので去年の年末に、(ストレートエッジの)社外取締役にも入ってもらった、もと上司の鈴木統括部長(鈴木一智氏、KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局統括部長)にことの内情を打ち明けました。そしたら案の定、怒られました。「最終営業日、12月26日にそんな話をするヤツがあるか、言い逃げするな」と。そこではもちろん結論は持ち越しで、年明けからいろいろ話をしました。最終的には、「とても残念だし絶対に許したくないけれど、そこまで意志が決まっているなら、どこまでできるか見届けてやる。応援してやるよ」と。

―― それでは、新会社のビジネスとしての目論見を教えてください。

電撃文庫『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4048705970/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=n094f-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4591128601" target="_blank">魔法科高校の劣等生</a>』(佐島 勤著、イラスト/石田可奈)累計700万部
電撃文庫『魔法科高校の劣等生』(佐島 勤著、イラスト/石田可奈)累計700万部
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三木:うちの会社のビジネスモデル、そのインカムのひとつは、担当する作家さん方からのエージェント料です。これには、クリエイティブアシスト、スケジュール管理、プロモーション、リーガルコンサル、ビジネス戦略、マーケティングアドバイスなどなどを含みます。そして、出版社さんからは、いつもの編集作業を行いますから、フリー編集者としてその編集費をもらいます。これには、アニメの宣伝会議やイベント、マーチャンダイズ関連の監修費も含みます。

 ストレートエッジは、プラットフォームを持っている事業者さんとパートナーシップを組んで展開するのがメインビジネスです。弊社が得意とするのは、契約している作家さんが生み出してくれるオリジナルIP(知的財産)、コンテンツです。

 今後は、そのオリジナルIPを使って、たとえばアニメやゲーム、ビデオグラムのメーカーさんと組むプランをいくつか考えています。そのIPを広げて、ライセンスやマーチャンダイジング事業にも繋げていきたいと思っています。

―― お聞きしていると、いままで三木さんが社員編集者としてやっていたことをKADOKAWAさんの中から切り出して、裁量権を大きく与えた、というような……。

三木:KADOKAWAさんから見るとそうかもしれませんね。僕が考えている「フリー編集者の最高の形」は、社員編集者が何もしない、寝ていてもいい。でも寝ている間にフリー編集者によって本がつくられてプロモーションされて話題になって、結果大ヒットしている、という流れです。もちろん「寝ててもいい」というのはあくまで極端な例で、その分、社員編集者は別の仕事ができます。少なくとも残業は減るはずです。

―― なるほど、ですが、一方で、独立したので三木さんは社長業もしなきゃいけないんですけど…

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