:そう思ったときに、どうすれば一番広報力があるかとなったら、マンガかなと。若い人たちは活字からも離れているというし。それでマンガを描こうと思ったんです。警察を広報するような。

「警察は(いい意味で)しょうもない人がやっていますよ」と世間に知らしめるような。

:そうなんです。自分が思っているマンガを描けたら、応募者の拡大にも、防犯広報も、交通安全の広報にも役立つと考えて、いろいろ自分で企画を考えました。だけど、いざ上司に決裁を上げようと思ったところで、「あ、これ、絶対に通らない」と気づいて。

気づくのが遅いと思います。たぶん弊社でも、講談社さんでも、いや、どこの会社でも無理じゃないかな。

:しかも、紙でも、ウェブも、どっちも警察にはすごくハードルが高いんです。予算が必要になるし。

 それで、前から酔っ払ったときにいつも同僚が、「モーニングとかで警察のいい感じのマンガが始まっていたら、警察にいい子がいっぱい来るのにね」と話していたのを思い出して、じゃあ、と、自分で描いて編集部に送ったんですよ。普段読んだこともないのに(笑)。

え、もしかしてマンガ雑誌読まないんですか。

:読まないですね。たまたま友人が知っていて、私も名前は知っていたのが、職業マンガが多いモーニングだったんですよ。知っていたと言いますか、ほかは知らなかった。そしてモーニングも読んでいませんでした。(タブチさんを見て)すみません。

タブチ:いえいえ、最近は新人賞に応募する方も単行本ばかりで雑誌は読んでいない人が多いです(笑)。

ちょっと話が横に飛んじゃうんですけど。マンガそのものには接していたんでしょうか? 例えば学生のころとかどうだったんですか。

:あまり読んでいなかったですね。

あまり読んでいない。じゃあ、絵を描いていたのは学生時代の余暇というか、趣味というか、暇つぶし?

:いやいや、学生時代も描いていないです。ずっと部活、剣道ばかりやっていました。

剣道少女で、家に帰ってきたら、ご飯食べて寝ちゃうみたいな。

:はい、そうですね。県予選で争うというようなレベルだったんですけど。ただ、好きだったので。部活の仲間も楽しかったですし。

じゃあ、そもそもマンガを読まない人だった。

女性警察官は「聖☆おにいさん」が好き?

:読んでいないです。有名どころは、たまにちらっと見ますけど。『進撃の巨人』は読んでいます。

もうひとりの担当編集者タカハシさん(以下タカハシ): 泰さん、『聖☆おにいさん』(中村 光作)は?

:あっ、聖☆おにいさんは読んでいました。楽しく拝見していました。

あっ、私も大好きです。でも、マンガ好きの人でもないのに、おにいさんを知っていたのがちょっと意外なんですが。

:最初は本屋さんの試し読みで、絵がインパクトあったので開いて読んで、面白いなと職場に持っていたら、「あ、それ私も好き」と言われることが多くて。私がいた職場での話ですが、女性警察官は聖☆おにいさんにはまっている人がたくさんいるんです。ストレスなく読めて、すごく楽しい気分になるという。相性がよかったです、つらい仕事と(笑)。

……なるほど。横道ついでに、ほかに男女問わず警察官の方に人気があるマンガとか、あるいは映画、ドラマって何かありました?

:進撃の巨人は、仲間内では敬礼はいつもアレでしたりしていましたけど……刑事系の方は、マンガもドラマも絶対見ないですね。ドラマ自体、あまり見る時間のない人たちが多いので。ただ、「踊る大捜査線」は別です。あれは「聖書」なので(笑)。

タカハシ:バイブル。

聖書ですか、あれ。

:いまだに刑事さんたちの中には、踊る大捜査線の着メロを登録している方がいます。特捜本部が立ち上がると、必ず1人は室井さんみたいな感じの刑事さんがいて仕切ってる。すごい影響力です。私のちょっと上の方々には、あれで警察に来た方、多いと思います。

おお、だから泰さんも「じゃ、私はマンガで」と考えたわけですね。

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