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Y:といいますと。

小田嶋:当時は、「指定校制度」というのがまだ残っていて。

Y:ああ、うちは東大しか採らないよ、みたいな。でも小田嶋さんの大学(早稲田大学)ならどこでもOKじゃないんですか。

小田嶋:いや、大学だけじゃなくて学部にも指定があったんですよ。だから早稲田でも文学部とか教育学部とかいうのはダメ、うちは法学部、経済学部しか採らない、という。銀行、商社だと文学部、教育学部あたりはお断りだと。そんなところに、「俺は早稲田の教育でーす」なんて行くと、あ、悪いんだけどうちの対象の学部に入ってないですよと言われて、「え?」と。結局10月1日は全部無駄足になりました。

Y:しかし、小田嶋さん、銀行や商社受けたんですか?

小田嶋:そういうわけでもないんですが、当時は、私だけじゃなくてみんな当時そうでしたけど、あんまり業種とか会社の規模とかということが分からなかったわけ。だから、とにかく有名企業に。

Y:知っているところに行こうと。

小田嶋:あとは「お堀が見えるところがいいな」みたいな。

Y:なんだか腹が立ってきました。準備していない割にめちゃくちゃ望みが高いじゃないですか。

就活で落とされたことがない?

小田嶋:そうなんですよ。「会社の窓からお堀が見えると何かちょっとかっこいいじゃん」というようなミーハー心理からそう言っているだけですけど、でも、お堀の見える企業ってみんな一流企業だということがいまいち分かってなかった。

 それで、1日目に大手町周辺は全部だめだということが分かって、失意のうちに帰ってきて、今後はちゃんと調べて、門前払いは喰わないところを受けようと。それで、1段外側のお堀でもいいやということに。

Y:それって江戸城の内堀から外堀ってことですか? 外堀通り沿いの会社に。

小田嶋:そうそう。内堀通りは諦めて外堀に。

Y:なんでそうお堀に拘るのか分かりません(笑)。

小田嶋:外堀に行くと、教育学部を受け入れてくれる企業があって、それで回ったのが食品のA社とB社と、あとぜんぜん違う業界大手のC社。その3つを回ったんですよ。

Y:回ったとおっしゃいますが、全部歩いて回れるじゃないですか。今の学生さんが聞いたら涙を流しそうなほどお手軽な就活ですね。で、ファンの方はご存じの通り、最終的にA社に行かれるわけですが、B社とC社はどうなったんでしょう。

小田嶋:その3つを受けて、B社は順調に重役面接まで行って、だけど「うちは北海道に行ってもらうよ」という話を聞いて、「じゃあ、やめた」と途中で撤退して。

Y:なるほど。リタイアしちゃった。C社はどうですか。