川口:いえ、あります。「星を追う子ども」(2011年)は、唯一、国内での販売が伸びずに制作費を回収できませんでした。後年、海外で当たって取り返せましたが。

経営的に、その失敗はダメージにはならなかったのですか。

川口:いえ、それほどの余裕はありません。あのときは、個人で借金して増資しましたね。会社として繋ぎの資金は銀行から、常に億単位で借りてますので、キャッシュはありますから倒産しませんが。金融機関対策として、2年続けて赤字になることはないように頑張っています。

 幸い、その都度、過去にやってきたことがきっかけになって、新しい仕事や売り上げが生まれている、というのが正直なところですかね。

なるほど。

川口:でも、もしかしたら日経の読者さんには失礼な物言いかもしれませんが、お金よりも、作品に関わってくれる人の青春をムダに出来ない、ということのほうが大きいですよ。映画に関わったら2年間、こやつらの…いや、スタッフの皆さんのことですが、すみません、口が悪くて。

大人が読む記事ですから、どうぞ素のまま。

気持ちよく前向きにぶっ倒れられる仕事がしたい

川口:美術マンや原画マンにとって、2年間は大きい。例えば27歳で作品に参加したスタッフが2年後には29歳になる。公開時には30歳。それは人生において貴重な時期の2年間です。それだけの時間を割いてもらうには、お金じゃなくて「こういう映画に参加した」と、一生、クレジットに残ることがなによりの「恩返し」なんだと思います。

 だから、(映画が)はずれたら申し訳ない。実際に作る人から、プロデューサーやメディアを売る人も含めて。映画もOVAも、「青春をムダにしない」作品を作らなければ。やるならば、そういう作品でなければ。

 だから、さっき(前編参照)も言いましたけれど、模倣、模倣でとにかく売り上げを立てて会社を「回す」、そういう仕事はやりたくない。参加した人に何も残らないから。調味料臭い、マーケティングっぽいのが見え見えなのはダメなんですよ。ヒリヒリするような面白い作品であれば、万一こけても、もちろん売れた方が全然いいけれど、最低限、関わった人達が納得できる。僕のところには赤字の報告が届くけれど、「ここまでやったんだから、ええやないか」と前向きにぶっ倒れられる。後悔が残らない。そっちのほうが大事だと思います。

変な質問ですけれど、そこまで作品の中身に熱くなる川口さん自身には、創作意欲はないんでしょうか。

川口:僕にですか?(笑って)ないないない! ないからやっていられるんでしょうね。自分がなんにもできないから。できるひとに作って欲しいし、そのためにいい環境を用意し、その人の持つ属性を見極めてあげないと、と考えるんです。そして、作る側が自分自身で意思決定をして、作品を愛する人たちがそれを支える。

 映像コンテンツはそういうスタイルで生まれるほうが、作っている方も見て頂く方にも、幸せだろうと思うんです。

では、川口さんの役割は何ですか。

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