川口:それに、うまい原画マンや美術の人はフリーでいたいと思っている人が多いんです。相手が腕を見込んで声をかけてくれますから、「次は××監督、その次は○○監督」と仕事を選べる。好きな原作で、ということもあるでしょう。選択肢は自分にあるから、うまい人ほどフリーランスでいたがるし、それは納得できる。

 正社員のなんのと言っても、「作品」がないとそもそも人は集まってこない。腕のいい人は、カネじゃ動かないんだよね…。

というと?

川口:「ここにいたら面白い仕事ができる」となったら、人が集まってくるんです。「これに関われるなら、数カットごとの契約で構いません」という人もいるし。

上手い人はお金だけでは動かない

なるほど。寄り道になりますが、フリーの方と契約する際は、どういう条件を提示するのですか?

川口:例えば原画マンで、作品が映画の場合なら「これこれの作品に関わっていただきたいので、1年半拘束させてください」と。作品の中身が決まって絵コンテができてきて、そこから根を詰めて描いていただくのはだいたい1年くらいですが、「その2、3カ月前から入ってください。後ろもずれるかもしれないのでその分の数か月も確保させてください。その間は月額何十万円で」みたいな感じです。

 それでも、そもそも上手い方は重視するところがお金じゃなかったり、例えば拘束期間中でも、「恩義のある他の監督に仕事を頼まれたので、どうしてもやりたい、抜けさせてください」となることもある。

映画だとそんなふうで、テレビだとそうはいかないんですか。時間と予算が最優先?

川口:「10カット、とにかく早く描いてください。予算は低いです。すみません」みたいになる…のではないでしょうか? 僕が腹立つのは、こんな状況は間違っているのに、誰もが「アニメ業界はこういうものだ」と妙に納得しながら嘆いていることです。作業内容も物価もずっと上がっているのに、動画単価などはずっと据え置かれている現状。それでアニメが作れると思っているオトナ達。変わらなきゃですね。

(後編に続きます。月曜日公開予定です)