無料で見られるテレビタレントと、入場料を払わねば見られない映画俳優の違いですか。しかし、映画の興収はさておき、さっき仰ったDVDやブルーレイなどのメディアが、最近は本当に売れない、と聞きます。

川口:はい、ここ5年くらい「DVDが売れない」と言われてきましたが、ここ2年はさらに売れませんね。テレビアニメになった作品で(販売枚数が)200本、という話も聞きます。10年前のオリコンのチャートと今の状況を比べたら、ガチで泣けます(笑)。

では、CWFも苦しくなっているのではないですか?

川口:例えば、「言の葉の庭」はもう7万本以上も売れています。2013年の作品ですが、去年(※2015年)だけで5000本売れました。この作品は劇場公開と同時にネット配信もしていて、iTunesでは、この年のダウンロード本数ナンバーワンの映画になったのに、DVDパッケージもこんなに売れるんです。現在はNetflixなどで月額1000円前後の固定金額で作品を見られるのですが、それでも今年(※2016年)に入って更に1万本が売れました。もちろん、この伸びは「新海誠の新作イヤー」という事情もありますが。

大昔ですが、2005年にお話を伺ったときは、「少人数でなんでも自前でやるから、低コストなのでやっていける」と言われてましたが。

川口:もう少人数とは言えませんね。正社員だけで20人以上いますし、さらにスタジオに入っているスタッフが30人近く。

つまり、月給を払っている定期雇用の人が増えた。

川口:2007年までは20人くらいだったのが、いまは50人を越えたと思います。

アニメーションの制作は、フリーランスの原画マン、動画マン、美術などを、作品ごとにその都度集めたり、よそのスタジオに外注したりして作るのが普通、ですよね。

できることなら、ぜんぶ正社員で作りたいです

川口:元々CWFは、美術スタッフを中心に、できるだけ正社員として雇用するスタンスでやってきました。なぜなら、スタジオの根本が、新海誠のために作った部隊だからです。新海誠はその気になれば1人で作品の全工程を作業できますが、それでやったら1本作るのに20年かかってしまう(笑)。「彼が望む世界、背景を作り出せるスタッフを育てよう」ということを最初に考えました。

 新海作品に美術は超重要です。美術が佳くないと、新海の作品の特徴のひとつ、モノローグの場面が生きないんです。

正社員で雇用するのと、フリーの腕利きの方を集めるのとはどう違うのでしょう。

川口:そもそも、この国のアニメーション業界全体で美術の人が足りていません。原画も動画も足りていないんですが…。そしてうまい人や美術専門スタジオはスケジュールが埋まっている。でも、自前でスタッフを持っていれば、いつでも質の高い美術が、背景が作れます。なので、これからも毎年ひとりふたりになると思いますが、正社員として雇用して、育てていくつもりです。

 極端な話になりますけどね、お金があったら、良い作品を作るには「全員正社員」が一番いいんです。俺はそう思ってます。さすがにそこまでは現状では無理ですけれど。

なぜ正社員のほうがいいのですか?

川口:一丸となってひとつの作品の完成に向けて突き進むには、一蓮托生のほうが向いていると思うからです。でも、それを目指すと人もお金もいくらあっても足りない。そして、人を抱えてしまうと、会社を「回す」ための仕事を受注せねばならなくなる。僕はそれが制作会社には、とてもよくないと思っている。だから、そこのバランスです。

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