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片山:結局、成長という言葉を真摯に捉えるなら、それは寛容さでしか掴めない。政治史もそれを教えているのですが、今回の新旧大統領のスピーチは、その難しさも明らかにしています。寛容にしても成果が出ないではないか。かえって悪化しているではないか。そういうこともあるでしょう。

 歴史から学ぶべきなのは「寛容への反動が強すぎるととんでもないことになる」ということもあります。第一次世界大戦後のドイツに生まれた寛容の国がワイマール共和国ですよ。ユダヤ人の難民が東ヨーロッパから押し寄せたのは、ワイマール共和国に行けば救われると思ったからです。それで国境を越えてどんどんドイツに集まった。寛容への期待で人が集まる。ところがドイツの中産階級が、彼らに既得権益を侵されて自分たちが貧しくなっていると怒りだし、ヒトラーを選んだ。

かくしてドイツは最強国になりそこねたわけですけれど。

片山:当時の状況が、オバマからトランプに移行する物語とそっくり…とは思いませんが、やっぱり似ている。よほど気を付けなくてはいけません。こんな時代に巡り合わせるとはねえ。

隣席の女性 あの、すみません。

でも、諦めて黙るべきではない

はい?! あっ、うるさかったですか?

片山:お隣で長々と好き放題にしゃべってしまって、申しわけありません。

女性 いえ、そうではなくて、あまりに楽しそうにお話しされているので、つい聞き耳を立てていたんですが、とても面白かったので。どなたかは存じませんが、雑誌とかに掲載されるのなら是非読みたいなと思いまして。

! ありがとうございます!

片山:それは大変光栄です。

こちらは片山杜秀先生で、媒体は「日経ビジネス」と申します。アドレスはこちらです。普段からこういう政治のお話にご興味が?

女性 いえ、投票にも行かないんですけどね(笑)。たまたま新宿でヴォイス・トレーニングの教室があって、帰る前にコーヒーを飲もうと思ったらお話が聞こえたんです。ありがとうございます。読ませていただきます。それでは。

(女性立ち去る)

片山先生、今までこういうご経験ありましたか。

片山:いや初めてです。僕に喫茶店で声を掛ける若い女性がいるとは思わなかった(笑)。

こういう話が、今の社会の「普通の人」にも、ちゃんと需要がある、ということじゃないでしょうか。

片山:はい、聴いてくれる方、読んでくださる方がいるのは嬉しいものですね。やはり、ヘンに厭世的になってはいけませんねえ。

(おわり)