スマホで育てて、モールで会おう

八谷:先ほどおっしゃっられたとおり、現状ではVRを体験するには一般ユーザーにとってはかなり敷居が高いんですが、逆に、企業が投資したリッチな体験設備が集客装置になるのではと考えています。たとえば、バンダイナムコさんが東京・お台場、現在は愛知県・長久手のイオンモールに「VR ZONE」というVR体験施設を作っていますが、インタビューによると、VR体験を予約して、待ち時間の間に買い回りしてくれる、昔の百貨店の屋上遊園地みたいな効果が期待できるとのことです。VRは、ショッピングモールにいる滞在時間を長くしたり、来店機会を増やすことに貢献する、と。

 そこのソフトとしては、ホラーとか、シューティングとか、エクストリーム系スポーツとか、どきどきハラハラさせるコンテンツが多いんですけど、中に「かわいいコンテンツ」があってもいいんじゃないか。自分が育てたキャラと遊べるものに発展できるかもしれない。

 あ、普段使っている自宅の環境では2次元でしか会えないけれど…

八谷:スマホで育てて、モールに出向けば立体になって一緒に遊んでくれる、なんて、面白くないですか。

 おお。なるほど。

八谷:そういうことも先々考えています。そのためには、自分たちが作ってみて、どうやったら楽しくなるのか、ノウハウを溜める必要があるわけです。ポストペットVRの売上で稼ごうとは思っていなくて、むしろユーザーへの感謝として作るんですけど、研究開発ではあって、これの先になにか金脈ありそう、今できるなら積極的にやってみよう、と思って。

 開発費を、「キャンプファイア」でのクラウドファンディング(こちら)で募っていますね。

八谷:はい。コスト面の話をすれば、昔のゲーム機、例えば初代プレステ、64とかの時代は開発する際に、プラットフォーム側が提供するライブラリ(ソフトを作るためのひとまとまりのプログラム)を使っていて、開発にはかなりの費用がかかりましたけれど、いまは汎用のゲームエンジンやライブラリが、無料だったり非常に安い値段で手に入ります。ハードも安価になって、開発は凄くやりやすくなっています。ポストペットVRはUnityで開発しているのですが、大学の教員、メディアアーティストとして学生さんにアドバイスするためにも、VRは手を付けておきたいジャンルだ、というのもあり。

蒲田温泉で、モモと握手

八谷:とはいえ、クラウドファンディングで全額をまかなおうとは思っていなくて、共犯者…というと言い過ぎですね。ユーザーさんと一緒に作る、マーケティングの一環とする、という目的の方が大きいです。目標額が集まらなくても、自分たちがやりたいことをコアなユーザーさんにちゃんと伝えられますし。オープンスカイもそうでしたけれど、大事なのは、ちょっとずつ、プロセスごとに、実現に近づき中身が変わっていく様子を、関わってくださる方々に見せて、面白がっていただくことです。

 初代のポストペットがまさにそうでした。β版を公開し、ユーザーの皆さんに助けてもらいながら、プロバイダー毎のクセを確認して安定性を高めていきました。あれと似た形にしたい、と考えてやっているわけです。

ポストペットVRの庭には温泉がある。
ポストペットVRの庭には温泉がある。
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 クラウドファンディングに参加してくださった方には、パトロンになっていただくわけですから、なるべく面白がってもらおうと思っています。シン・ゴジラ的に、東京上陸は蒲田から、と思っていまして、蒲田温泉(東京都大田区)の二階に宴会場があるので、3月のα2版の体験会は、そこで温泉付きの体験会にしようと思っています。今回、庭に温泉もつきましたし。

 最近、「makuake」のクラウドファンディングを使った映画「この世界の片隅に」のプロデューサーの方から(記事はこちら)、「“いま何をやっているか、どこまで来たか”を、参加してくれた方々に報告するかをすごく意識した」と聞きました。

八谷:それはものすごく共感します。ちなみに僕もあの映画3回見ました(笑)。我々のもそうですが、「雪だるま方式」のプロジェクトってありえると思うんです。小さいこと、できることから始めて、具体的な成果や行動を通して周りを巻き込んでいく。収益モデルを立てて「このくらい資本が必要」と集めてからスタートするのではなく、でも無理はしないで、自分たちで出来る範囲でぼちぼちやってみましょう、という。

 我々ペットワークスは全員で8人、常勤5人の小さな会社です。僕も芸大と掛け持ちですし。ちっちゃい会社って、変わり身の早さというか、恐竜時代の小さなほ乳類みたいに、適応力で生き抜くしかない。やりたいことがあるなら、すぐに手を付けておく。ビジネスになるかは、走りながら考える。オープンスカイはある程度赤字が前提でしたけれど、ポストペットVRは最終的にはちゃんとビジネスになるように考えていくつもりです。

 今回は収益を考える。それはなぜですか?

八谷:大きな理由は、ポストペットを愛してくださる方々への責任ですね。オープンスカイのM-02Jは量産を前提としない試作機でしたけれど、ポストペットは多くのユーザーの“思い出”や“体験”を預かるわけなので、運用を始めて、サーバーを維持していく費用を考えると、我々の規模の会社では簡単には手を出せない。途中で簡単に「すみません、もう続けられません」と放り出すことはできませんから。

 なるほど。

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