話は2012年に遡ります。海の石けんの購入者から、「せっけんにカビが生えている」という申し入れがありました。製造委託会社によると、工場内での原材料の保管状況に問題があったかもしれないとのことでした。
原材料のフコイダンなどは天然成分で保管状況が悪いと腐敗する可能性があります。そのため厳重に冷蔵庫で温度管理して保管してもらっていました。しかし一度の製造で使い切らなかった原材料が、保管状態がよくないまま次の製造で使われていた可能性が出てきました。
改善策として原材料のロットの単位を小さくして、少量を使い切るように製造工程を見直すことになりました。その後はカビも出ず、安心したのを覚えています。
そこにウソがありました。製造委託会社は、念には念を入れたのか、この時から無断で防腐剤のフェノキシエタノールを入れ出したのです。
経緯を把握したあとの5月17日、役所へ回収の届け出をし、その後新聞などで報道されました。4年もの間、防腐剤入りのせっけんを販売していたのは痛恨の極みです。
製造委託会社が指示書の通りに製造せず、勝手に別のものを混入させるとは想定すらしていませんでした。回収騒ぎになったら賠償の責任を負うのは製造委託会社ですので、何の合理性もないと思い込んでいた部分もあります。
自社で成分検査ができなかったのかとも言われますが、指示書通りに作られるのが当然と考えていたため、やりませんでした。ウチはせっけん以外にもシャンプーやローション、育毛剤などを製造委託で作っていますが、どの会社でもその方針は変わりません。
成分分析で特定の成分が含まれているかどうかを検査するのは比較的容易でコストもかかりません。しかしどんな成分がどれだけ含まれているかを全て分析するには1回に何百万円の費用がかかり、分析に時間もかかります。ウチの規模程度の会社で、全製品に定期的に完全な成分分析を実施するのは現実的ではありません。
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