海外産はまきたくない

 それでも潮干狩りができるだけの量を確保するのには苦労していました。そこで地元で足りない分を補うために、ここ数年は仲買人から近隣の愛知県産のアサリを購入していました。しかしこちらも漁獲量が減っており、今年はおろせないと言われていました。値段を高くしてもムリだとも言われました。

 仲買人からは、ある地域のアサリなら手に入ると言われましたが、これは断固として受け入れませんでした。その地域のアサリには韓国や中国のアサリが含まれている可能性があるためです。海外産の稚貝を国内で育てて、そこでの生育期間が一番長ければ現地産と言っていいルールもあり、見分けるのは難しい。これは信念の問題でできませんでした。

 潮干狩りは中止しましたが、いくつか誤解もあるので言わせてください。一つは潮干狩りができないのは浜名湖が汚れたからではと言われたことがありますが、大きな誤解です。

 アサリの減少は全国的な現象ですし、下水処理などの技術の発達で以前よりもきれいになっています。漁獲量の減少も、きれいな水が増えてアサリのエサになるプランクトンが減ったことが原因ではないかとみているほどです。水の問題はありませんので従来同様、浜名湖での磯遊びは楽しめます。

 また、浜名湖で個人が潮干狩りをしてはいけないということではありません。買い上げてまいたアサリがないのでどれだけ取れるかはわかりませんが、船で渡してもらった場所や陸続きの水際線から5mまでの場所であること、取る量は1日1人2kgまでなど、ルールの範囲であれば問題ありません。

毎年乗船場から船に乗り、鳥居周辺のアサリが取れる場所まで移動する
毎年乗船場から船に乗り、鳥居周辺のアサリが取れる場所まで移動する

 最近はカキ殻を砕いて丸くしたものをネットに詰め、浜名湖に数多くまいておく活動を始めました。アサリの稚貝がひっかかりやすく、さらにネットの中なので魚などに食べられない。稚貝がよく育ちそうなので、それをまいてアサリが増えることを期待しています。

 来年には浜松を舞台にした井伊直虎の大河ドラマが放映されます。ドラマの影響で観光客も増えるでしょうし、潮干狩りの利用者も増えるかもしれません。来年以降は潮干狩りができるよう、アサリの量を増やす活動に引き続き取り組みます。

枯渇する水産資源の象徴 漁獲量は1/5に

 全国のアサリの漁獲量はピーク時には年間15万トンを超えていたが、1980年代半ばを境に急激に減少した。ここ数年は3万トンを下回るなどピーク時の5分の1ほどにまで落ち込んでいる。

 全国同様に浜名湖でもアサリが減少している。吉村組合長によると2014年は漁獲量が6000トンほどだったが、2015年は4000トンほどに下がってしまっているという。

 原因は埋め立てや干拓を含む海岸工事、河川改修、水質汚染などによって環境要因が悪化し、アサリの生息地が失われているためだと言われている。

 しかし水産庁の調査ではそうした場所ではない地域でもアサリの減少がみられるケースが増えているという。

漁獲量が急激に減少している
●全国のアサリの漁獲量推移
漁獲量が急激に減少している <br/>●全国のアサリの漁獲量推移
出所:農林水産省

 研究機関や自治体などによるアサリの減少の原因分析や、漁業関係者による漁獲量の制限、稚貝の育成、天敵の駆除といった資源確保の取り組みが進んでいる。とはいえアサリの漁獲量向上に向けた決定打が見いだせていないのが現状だ。

(日経ビジネス2016年5月23日号より転載)