億単位の更新コストが負担に

<b>左:石原裕次郎記念館は海を望む小樽港マリーナそばに立地している<br />右:エントランスホールには代表作「西部警察」で使われた自動車を展示</b>
左:石原裕次郎記念館は海を望む小樽港マリーナそばに立地している
右:エントランスホールには代表作「西部警察」で使われた自動車を展示

 小樽でこそ見てほしいという点に関しても徹底していました。百貨店などから裕次郎展をやってほしいといった話も多く頂きましたが、全てお断りをしてきました。偉そうな商売ではあったとは思いますが、やはり、わざわざ小樽に来て見ていただきたいという思いが強かったからですね。

 実はオープン時点では、5年ぐらいやれば十分だろうという意見も強かったのです。それがこれだけ長きにわたって支えていただいたことは本当にありがたいですが、今年8月をもって閉館することを決断しました。その大きな要因はいくつかあります。

 まず大きかったのが館内設備の問題です。当館では裕次郎さんの世界を映像で展開していますが、モニターやテレビが100台以上設置されています。機械の入れ替えやシステム面のソフトの更新なども必要になっていたのですが、これには恐らく億単位のコストがかかる上、1カ月以上休館せねばならないという試算がありました。

 展示関連だけでなく、冷暖房の設備も同様に取り換え時期にきていました。さらに、根本的なライフラインの問題もありました。海に近い立地のため、塩害による腐食が激しいんですね。レストラン兼喫茶店もあるのですが、水漏れなども激しくなっていました。

 実際には、インフラの設備も含めてあと3~4年は運営できたと思いますし、利益も確保できたと思います。ただ、総合的にこうした状況を考えると、ここらが潮時だろうと判断したということですね。何より、赤字倒産したとなれば、裕次郎さんの名前にも傷をつけてしまう。余裕のあるうちにやめるのも裕次郎さんらしいですしね。

ファンが楽しめる仕組みづくりを

 石原プロモーションの役員会でも、こうした判断を尊重して、昨年の6月ごろに結論を出し8月に発表しました。(裕次郎さんの妻である)まき子さんにとっては旦那さんですから、できれば永遠に続けてほしいという気持ちはお持ちだったと思いますが、色々と話をして、理解していただきました。

 閉館発表後はその反響の大きさにも驚いています。今年8月までは引き続き、多くの方に来館いただきたいですね。また、小樽市からはこれまでの我々の取り組みについて感謝の言葉も頂きました。引き続き、何らかの形で協力ができればと考えています。

 今後については、展示品は基本的に東京に戻すことになります。こうしたハードを作って品々を展示することはしませんが、今後も全国の裕次郎ファンの皆様に楽しんでいただける仕組みづくりが重要だと思っています。

 例えば、これまでやってこなかった、キャラバンのような形で全国に「出張」していくのも一つですね。これまで足腰が弱って北海道まで来られなかったお年寄りの方々も、自宅近くの百貨店での展示会であれば見に来ることができるようになる。こうした事業形態に変えていくことになります。

 26年というのは、人間の人生にとっても相当な域を占めている期間。ここまでやってこられたのは、本当に「ご苦労さんでした」、という気持ちですね。私自身も、石原裕次郎という人の大きさを改めて実感しています。

<b>左:多くのレコードは石原裕次郎氏の歌手としての功績を物語る<br />右:映画やドラマで使われた衣装や道具類は全て本物</b>
左:多くのレコードは石原裕次郎氏の歌手としての功績を物語る
右:映画やドラマで使われた衣装や道具類は全て本物

(日経ビジネス2017年3月6日号より転載)